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「あの……波折先輩、大丈夫ですか?」
「……なんでもない、自分の仕事に集中しろ」
「は、はあ……」
生徒会の活動が始まってから、沙良は様子のおかしい波折のことが気がかりでならなかった。いつもはすっと背筋を伸ばして座っているのに、今日は身を屈めて下を向いている。今日は個人の作業が中心のため、とくに活動に支障がでないにしても……どうみても、波折の様子は変だった。
「……あ、波折。これにハンコもらえる?」
「あ、ああ……ッん!?」
鑓水がふいに資料を波折に手渡す。その瞬間、波折はびくんと身体を跳ねさせて小さな悲鳴をあげた。目を眇め、はあはあと息をあがらせて……波折はなんとか資料を受け取るが、その頬には汗が伝っている。
「波折~大丈夫?」
「……だい、じょうぶ」
鑓水はにやにやとしながら――手元のリモコンをいじる。
鑓水が波折に持ちかけた「ゲーム」とは……生徒会の活動を、アナルにバイブを挿れたままで完遂すること。遠隔操作を可能とするバイブで、鑓水は逐一波折を責め立てる。波折は強弱のついた振動に耐えながら、ミスをしないように仕事をしなければいけない。大事な仕事だから怖くてそんなことはできないと波折は断ろうとしたが、結局やることになってしまった。
(さすが生徒会長……なかなかしぶとい)
細かくバイブの強弱や動きを変えてやってもなんとかたえぬいている波折をみて、鑓水は心のなかで拍手喝采を送っていた。ド淫乱とはいっても生徒会長の任務は何が何でも遂行するらしい。活動が始まってから30分――波折は手を休めることはなかった。
「……ッ、は、ぁ……」
奥のほうで、バイブがブルブルと震えている。前立腺に当たるように鑓水が位置を上手く挿れたものだから、バイブが回転するたびに表面の凹凸がごりごりとソコにあたって、じんじんと下腹部に熱が蓄積してゆく。
ひく、ひく、と肉壁が疼いているのが自分でもわかる。活動が始まって約2時間。もう波折は、何度も達していた。絶頂の兆しと同時に俯いて、必死に声を堪えながら静かに達する。ビクビクッと全身が小さく震えて変な声が漏れそうになるが、唇を噛んでそれも耐えた。
――生徒会長の務めは果たさなければいけない。波折の中に刷り込まれたその想いが強い理性となって、醜態を晒すのを防いでいる。
しかし……もう、限界だった。繰り返される絶頂は少しずつ大きなものになってゆく。
「――波折」
「……!」
鑓水が波折の名を、呼ぶ。はっとして顔をあげれば、鑓水は微笑みを湛えてこちらをみている。
「手、止まってるぜ。大丈夫か?」
「……ッ、だい、じょう……ぶ」
「波折……あと、10分。10分でその資料……全部確認できるの? 無理してやって確認漏れがあったらダメだよ?」
「……で、も……」
ふん、と鑓水が笑った。そして、ひょいと波折の机から資料の束を取り上げる。あ、と波折が声をあげたが、それと同時に鑓水はリモコンの強弱をマックスまであげてしまった。
「~~~ッ」
どさ、と波折が机の上に突っ伏した。生徒会のメンバーが驚いて波折に注目する中――波折の身体はビクッ、ビクッ、と小さく震える。
「波折ー、大丈夫か、具合悪いみたいだな」
「……けい、た……」
「悪い、神藤……波折の分の資料、代わりに見ておいてくれる? 残りちょっとだからさ、お願い!」
「は、はあ……」
急変した波折の容態にぎょっとした顔を浮かべている沙良に、鑓水は波折の持っていた資料を手渡した。そして、波折の元に寄って行くと、着ていたブレザーを波折の下腹部を覆うようにかけて、そのぐったりとした身体を抱きかかえる。
「ちょっと俺、保健室いってくんね! 波折のこと休ませてあげなきゃ!」
はあはあと波折は荒く呼吸をしながら鑓水におとなしく運ばれていった。残された生徒会のメンバーは、波折を心配するように鑓水の背を視線で追い続ける。
少し生徒会室から離れたところで、鑓水は波折に囁いた。
「最後までお仕事できなかったな、波折。オシオキ、しなきゃ」
「……おしおき」
仕事を最後までできなかった罪悪感、沙良に負担をかけてしまった申し訳無さ――それらが波折のなかに渦巻いていたが、「オシオキ」、その言葉に……波折の心は歓びに満たされる。
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