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「……愛しているよ」  そして、そっと、唇が重ねられる。  鑓水の舌が咥内にはいってくると、波折はそっと自分のものと絡めさせた。静かに、お互いの熱を溶け合わせてゆけば、頭の中がじわじわと熱くなってゆく。 「んっ……ん……」  押し倒されると、ベッドがキシ、と軋んだ。シーツと鑓水の間に閉じ込められて、波折は身動きがとれない。鑓水の熱を一身に浴びるような、そんな感覚だった。胸がどきどきとして苦しいのに、逃げることもかなわない。くらくらして、もうわけがわからなくなって、鑓水の舌に好き勝手口の中を犯される。自分も舌で応えたいと思うのに、全身が蕩けてしまって動けない。 「あ……」  服を、徐々に脱がされてゆく。シャツのボタンをひとつひとつ外されてゆく時は、本当に恥ずかしかった。何度も身体を重ねていて、裸なんていつもみられているのに、ましてや今は部屋は暗いというのに、ものすごく恥ずかしかった。鑓水が全てのボタンを外し終えた時には、波折の顔はすっかりとろとろになっていて、瞳は熱で浮かされたようになっていた。くったりと身体をベッドに預けて、シャツをはだけてはあはあと荒い呼吸をする波折の色香は壮絶で、鑓水も思わず息を飲む。波折の身体を纏う布を全部剥いで、鑓水も服を全て脱いで、お互いが裸になれば「いよいよ」といった感じになって何故かふたりとも緊張してしまっていた。 「あっ……あ、んっ……」  するりと鑓水が波折の肌を撫でる。それだけで、波折の身体はびくびくと震えた。ただ触れているだけなのに、波折は脚をもじもじとさせて、すぎるくらいに感じてしまっている。口に手をあてて声を漏らさないようにしている姿、そして恥ずかしさのあまり涙をぽろぽろと流している姿はさながら淑女のようで、鑓水の興奮を煽った。 「あぁんっ……!」  少しずつ、少しずつ身体をほぐしてゆく。波折の感じるところを責め、そして秘部に指を挿れて柔らかくしてやる。今まで散々いやらしい声を鑓水にきかせていたというのに、波折は今更のように声を必死に我慢して、感じすぎていることを隠すようにぎゅっとシーツを握りしめて、まるで別人のような態度に鑓水はくらくらした。可愛すぎて、どろどろに溶かしてあげたいと思った。 「……あっ……は、ぁ……」  甘く、優しく、身体の隅々まで愛撫してやれば波折はそれだけで何度も達した。もともと感じやすい身体は、変わり始めた二人の間の想いによってさらに感度を増して敏感になっていた。波折の中に生まれた恥じらいが更に快楽を煽って、鑓水が波折の秘部をほぐし終える頃には波折の下腹部はペニスから溢れでた液体でびしょびしょになっていた。 「け……い、た……」 「波折、可愛い」 「あっ……」 「可愛いよ、波折」  鑓水がゆっくりと波折の中に熱をうずめてゆく。はいってゆく途中、波折がゆるゆると手を伸ばしてきたから、鑓水はその手を掴んでやった。指を絡めて、唇を重ねてやれば波折は安心したように、嬉しそうに甘い声をこぼす。最後まではいると、そこで波折はまたイッてしまった。 「あっ……あ……」 「動くぞ」 「けいた……」  鑓水が波折をぎゅっと抱きしめる。全身で波折に覆いかぶさって、その状態でゆっくりとピストンを始めた。 「あぁっ……あっ……ふぁ……あ……」  身体全部が、優しさと暖かさ、そして彼の匂いに包まれる。あんまりにも気持ちよくて、波折はうっとりと目を閉じた。鑓水の背に腕と脚を回して、しがみつく。密着しながら揺さぶられて、じわじわと繋がったところから快楽が広がってゆく。 「あっ……あっ……あっ……あっ……」  きし、きし、とベッドが鳴る。抱かれている、そんな感じがした。ぐ、ぐ、と最奥を優しく、そして力強く突かれて身体の奥がきゅんきゅんとする。気持ちいい。ほんとうに気持ちいい。 「けーたっ……あっ、けーたっ……」  何度か体位を変えながら波折はたくさん突かれた。どの体位で突かれるときもぎっちりと身体を抱きしめられて、愛されている感じがたまらなかった。気持ちよすぎて、イキすぎて。快楽の渦に突き落とされたような感覚。ズン、ズン、と奥を突き上げられるたびに身体は歓喜に震え、波折の口からは甘い嬌声が飛び出してしまう。 「はぁっ、う……あっ、あぁっ……」 「っ、波折……締め付け、やばい、」 「いくっ……いっちゃう……あぁっあっあっ……いくー……っ」  優しく激しく何度も何度も突いていると、波折の肉壁がぎゅううっと収縮をはじめた。すでに何度も達していたが、最大のものがきたらしい。波折は悶えるようにかたかたと震えて鑓水にしがみつく。鑓水は瞳を眇め、軽く腰を引くとーー一気に突き上げた。 「はぁんッ……!」  ドスドスと奥の奥を突くようにして鑓水は激しく腰を打ち付ける。最後の最後での激しすぎるピストンに、波折は快楽のあまり甲高い声を仕切りに出し始めた。ギシッギシッとベッドスプリングが激しくなって、身体がぶつかり合う音も生々しく響き渡る。 「あっあっあっあっあっ」 「波折っ……好きだ、波折……!」 「けっ……た……あっあっ、け、い……た! あっあっあっ」  唇を重ね、めちゃくちゃに波折を揺さぶる。波折は鑓水の背に爪を立てながら、意識が飛んでしまわないように必死にキスに応えた。  じゅくじゅくと熱が身体のうちに蓄積していく。びりっ、びりっ、と電流のような感覚が断続して身体を突き抜ける。びくんっ、波折の身体が一度大きく震えた。 「あっ……!」  そして。一気に、それは迫り来る。強烈な絶頂が押し寄せてきた。身体が勝手に収縮し、びくびくっと激しく震えだす。 「あっ、ああーっ……! あっ、あぁ! 」 「波折ッ、」 「けいたっ……けいたぁ……!」  強すぎる締め付けに、鑓水も波折の中に出してしまった。中に出されたことを感じ取った波折は、恍惚とした表情を浮かべてぐったりと横たわる。全身から汗が吹き出ていて、びくんっ、びくんっ、と快楽の余韻が残る波折の身体は酷く淫靡で、だしたあとだというのに鑓水は思わずどきりとした。 「波折……」  疲れ切った波折の身体を愛でるように、鑓水は再び波折を抱きしめる。くったりとした波折の唇を奪えば、波折はぼんやりとしながらも嬉しそうにキスに応えた。 「愛してる、波折」 「けーた……けーた……」 「愛してる、愛してるよ波折」 「けーた……」  波折がぽろぽろと涙の雫をこぼしてゆく。非常に、愛らしかった。じわじわと這い上がってくる眠気に敗北するまで、鑓水はひたすらに、どろどろに波折の身体を愛で、愛を囁き続けた。

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