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沙良が波折と距離をとるようになってから三日が経った。あの日から、昼休みになっても沙良が屋上へくることはなくなった。
「……寒い」
いつも、一人で屋上にいた。沙良が来るようになってから、二人で屋上にいた。会話が特別弾むというわけではなかったし、特別楽しいと感じていたわけでもない。でも、再び一人に戻った今。あの時間が本当は好きだったのだと、気付いてしまった。あの時間が酷く恋しく、懐かしく思えた。あの頃は空が抜けるように蒼いと感じていたのに、今は何も感じない。適当に写真でとった空でもみているよう。太陽の眩しさも、鬱陶しいとしか感じない。
――屋上ってこんなに寒かったっけ。
もう一度……あの時間を取り戻したいと思った。沙良に壁をつくられるのが、寂しくてたまらなかった。
波折はゆっくりと腰をあげて、屋上を出てゆく。まだ、昼休みが始まって10分。向かう先は、沙良の教室だった。
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