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次の日の空は快晴だった。昨日の大雨は嘘のように、きらきらと太陽の光が降り注いでいる。
鑓水と波折は、相変わらずの注目のなか二人で登校していた。校門を抜ければ大勢の生徒が集まってきてなかなか前に進めない。波折と一緒にいることでこのすさまじい注目を浴びることに慣れてきた鑓水は、苦笑しながら生徒たちを掻き分けて校舎にはいってゆく。
「……あれ?」
二年の階まであがる途中、二人は沙良の背中を発見した。隣には、華子がいる。二人はまだ人気のない廊下を歩いて行き、空き教室に入っていってしまった。
「……追ってみる?」
「えー……でも」
「いや神藤絶対あの子のことそんなに好きじゃないだろ! 波折から離れてまだ三日だろ? そんな三日やそこらで完全に波折のこと諦められるとは思わねえな」
二人はこそこそと沙良たちが入っていった教室に近づき、バレないように中を覗いてみる。
「……やっぱり、こわい」
「気持ちはわかるけど。でも」
「こわいよ、だって、」
「やるって決めたんだから、ね、大丈夫」
「……やる?」
沙良と華子は向かいあって何やら話している。一体何について話しているのかわからない鑓水と波折は首をかしげることしかできなかったが……次の瞬間、思わず声をあげそうになった。
半泣きの華子が沙良を見上げたそのとき、沙良が彼女を軽く抱きしめたのだ。そして、優しく彼女の頭を撫でている。
「……俺、ちょっとトイレいってくる」
「あっ、ちょ、波折……!」
波折は沙良の行動にショックを受けてしまったのか、逃げるようにしてその場を立ち去った。鑓水は沙良と華子のこれからの行動が気になるところだったが、後ろ髪を引かれながらも波折のことを追いかけた。
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