176 / 350

***  熱気の篭る車内。男は半裸の波折に覆いかぶさり、ひたすらに波折の顔にキスの雨を降らせる。波折はぼんやりとしながらうっとりと男のキスを受け入れる。 「久しぶりだな、波折……やっぱりおまえは可愛い。可愛いよ」 「あ……ん……ご主人様……」 「これからあんまり会えないなぁ、鑓水くんと神藤くんに可愛がってもらうんだぞ」  波折は、はあはあと吐息を吐きながら、男の背に腕をまわし、ぎゅっと抱きついた。目を閉じ、掠れ声で言葉を紡いでゆく。 「沙良も……あの動画のこと、気付きました」 「ふうん? どんな反応したんだ?」 「やめろって。ご主人様から離れろって……」 「鑓水くんはそんなこと言ってなかったのにな~。ほ~」 「俺のことを、根幹から自分のもとに引っ張ろうってするんです……」  波折の手が、ふらりと動く。指先が男の頬を滑ると、男が顔をあげて波折のことを見下ろした。波折はふっと気怠げに、淫靡に微笑む。 「……無理なのにね。俺は、貴方に心臓を掴まれているから……」

ともだちにシェアしよう!