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「ご、ごめん、恥ずかしいことして……!」
「いいよ! 可愛かったから!」
「ほんとごめん……!」
「いいよ! 最高に可愛かったから!!」
駅からでて家に着くまでの道を、手を繋ぎながらぱたぱたと歩いてゆく。電車のなかで恥ずかしい思いをしたのを引きずりながら、騒ぎながら家に向かっていた。
夕焼けに染まり始めた空が二人を紅く照らす。時折すれ違った人たちがくすくすと笑いながら二人を見ていた。
マンションについて、エレベーターに乗ったところからはとたんに二人は黙り込む。そわそわとしながら波折の部屋に向かっていって、中に入った瞬間にぎゅっと抱きしめ合う。
「ただいま」
「おかえりー。ただいま」
「おかえり、慧太」
波折が嬉しそうにぐいぐいと背伸びをしてくる。鑓水はそんなにキスがしたかったのか、と噴き出しながらも、波折にちゅ、と口付けてやった。波折は唇を押し付けるようにして鑓水のキスに応え、やがて唇を離すとてれてれとしながら俯いてしまう。
「今日、すごく楽しかった」
「そりゃよかった」
「すごく、幸せだった」
「ん? 幸せ?」
「うん」
へへ、と波折が笑う。本当に楽しんでくれたんだなあ、と思って鑓水は胸がいっぱいになった。もう一回キスをしたいし、嫌がられるくらいに抱きしめて頭をわしゃわしゃと撫でてあげたいし、エッチしたいし。とにかく波折のことを愛でたくなって、逆に固まってしまう。
「ご飯はまだ早いよね、何する?」
「な、何って?」
「エッチする? いっぱいちゅーする?」
「え、ええっ、えーと、風呂入ろう?」
「お風呂? もう入るの? せっかく女物の下着着てるのに?」
「そ、そっか、じゃあキスしようか」
「うん!」
どんだけ俺と触れ合いたいんだ。楽しそうに自分にすり寄ってくる波折が可愛すぎて、鑓水は思わずたじろいでしまう。
中にあがると、そのままベッドにダイブした。鑓水が押し倒される形になって、上から波折がぎゅっと抱きつく。家に入ったときから終始笑っている波折が可愛らしくて、鑓水もつられて笑いながらきゅんきゅんとしていた。
「なんでそこまで楽しそうなの?」
「わかんない、楽しい」
「そっかー、よかったな」
「溢れてくるっていうか」
「何が?」
波折が起き上がって鑓水を見下ろす。窓から差し込んでくる紅い光に照らされて、波折の瞳がきらきらと緋色に輝く。すごく、綺麗だった。赤に濡れた波折の顔がほころんで、ふわ、と柔らかく微笑まれる。
「慧太。大好き」
「……っ」
夕焼けは、なぜか心をセンチメンタルにさせる。波折の微笑みに酷い切なさを覚えて、鑓水は泣きそうになった。 二人で、しばらくキスをしていた。舌を絡めて、お互いの熱を溶け合わせる。あまりにも気持ちよくて、ずっとそうしていた。深い温もりの中にじわじわと沈んでゆく、そんな幸福感。
「慧太……ちょっと、オモチャのスイッチいれて」
「ん? エッチしたくなった?」
「そうじゃないけど……いや、エッチはしたいけど、そうじゃなくて……エッチな気分になりながら慧太に抱きしめられたい」
「エッチしたいのと何が違うんだよ」
「違うんだって、慧太、とにかく慧太にぎゅってされながら気持ちよくなりたい」
「んー、おっけー。わかったわかった。あんまりアンアン言うなよ、俺がヤりたくなる」
淫乱ちゃんの考えることはよくわからない。まあ、あらかた快楽と幸せな気分というのが波折の中で結びついているのだろうと納得して、鑓水はローターのスイッチをいれてやった。
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