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「――おかえり、父さん」
「ただいま! 沙良! おう、なんだ不機嫌そうな顔をして!」
電話から一時間と少し経ったころに、沙良の父・洋之(ひろゆき)は帰宅した。洋之が帰ってくるとなると夕食の時間を遅らせることもできないため、波折とろくにイチャつく時間もなくご飯をつくる羽目になった沙良は、行き場ないいらだちを抱えていたのだ。だって、洋之に悪気なんて全くない。むしろ、普段なかなか帰ってくることができないからと、できるだけ早く帰宅しようとしてくれているのである。
「父さん、今日――」
「おっ、いい匂い」
洋之は家にあがると、すっとそのままリビングに向かっていってしまった。今日の夕食はポークソテーだ。それから波折が家にある材料をつかって作れると提案してくれたコンソメベースのスープ。出来立てのいい匂いにつられて早々にリビングに向かった洋之は、テーブルにご飯を並べていた波折をみて、驚いたように言った。
「――ど、どこからいらっしゃった王子様でしょうか!」
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