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沙良は洋之の部屋に連れてこられた。気まずいどころの話ではない。たとえ彼女とキスをしているところをみられたとしても気まずいのに、今回は相手が男。反発されたところで波折のことを好きだと言い張る自信はあるが、やはり親にああいったところを見られるのは抵抗があった。
「波折くんと付き合ってたんだ」
「い、いや……付き合ってるっていうか……えーと……」
「ああ、いいんじゃない。俺別に偏見もってないよ」
「じゃあ……なんで俺呼び出されてるの……」
……ああ、よかった。波折との関係を否定されなかった。でも、呼び出されたからには何か話があるのだろう。
洋之はベッドにどかっと座ると腕を組んで沙良を見つめる。沙良は目を逸らしながらその視線に耐えることしかできない。
「……エッチするときはどっちが突っ込む方だ」
「――ぶっ」
突然何を言い出すんだ! 沙良は驚きのあまりむせてしまって、呼吸困難に陥りそうになった。しかし洋之の顔はあくまで真面目だ。
「昔俺の同級生のゲイカップルがな! ろくに準備しないでエッチしたらケツ切れたっつって大変なことになってたんだよ!」
「し、知らねえ!」
「まだおまえはヤってないのか! いいか、ヤるときはちゃんとこれ使うんだぞ」
「これ?」
洋之がいそいそと引き出しから何かを取り出す。そしてそれを沙良に手渡した。
「こ、これは……」
「やる、息子よ!」
手渡されたのは、ローションのボトルだった。なんで彼がそんなものを所持しているのかは、聞きたくない。まあ、部屋のなかにAVやらエロ本やら隠し持っている彼のことだ、とそれ以上考えるのはやめて、沙良はぐっと洋之に親指を立ててみせた。
「……ありがとう、父さん」
「励めよ」
この人の息子でよかったと今まで生きていて一番思ったかもしれない。こんなところ夕紀には見せられないな、と思いつつ、沙良は妙に元気づけられた気分になったのだった
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