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「女装のまま家に帰らないの?」
「誰が!」
片付けを終えて、沙良は波折と鑓水と共に校舎を出た。まだ生徒たちがわらわらと残っていて、賑やかな帰り道。こんなに暗いなかでもがやがやとしているのが学園祭前らしくて、沙良はわくわくしていた。
これから三人で沙良の家に向かう。今日は家に誰がいるかなーと考えて、父だけはいて欲しいな、と沙良は祈った。鑓水と波折を一緒に家に連れ込んだら、なんだか危なっかしい気がしたからだ。さすがに親がいれば変なことはしないだろうと、沙良は洋之に(頼むから家にいてくれ)とどうせ届かないテレパシーを送る。
「神藤なに変な顔してんの」
「し、してないですよ」
「ふーん」
あ、これは絶対やばいことを考えている顔だ、沙良は口元をひきつらせる。何も気づいていない波折が、なんだか可哀想だ。絶対に帰ったら鑓水にヒンヒン言わされるのだから。
沙良がじっと鑓水を威嚇するように睨みつければ、ふんと笑顔を返されて、ああこれはもうダメだ、と沙良は悟ってしまった。
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