＊＊＊ 　帰宅して、沙良はサッと血の気が引いたのを感じた。玄関を入っていけば……家の中に灯りがついていない。つまり。 　沙良は急いでリビングに向かっていき……そして、テーブルに乗ったメモを発見する。ぎょ、としながらリビングの灯りをつけてメモをみてみると…… 『ごめんな！　今日は帰り遅くなります！　洋之』 ……と書いてある。 　父は、いないようだ。夕紀もこの時間までいないということは……また友人の家にいっているのだろう。どんだけお泊りが好きなんだろうかあの妹は。 　最悪だ。絶対鑓水がよからぬことを考える、と沙良は絶望しながら玄関に置き去りにしてきた二人のもとへ戻る。 「……明日、早いですからね。早いところお風呂入ってさっさと寝ましょう。あ、お風呂の順番はじゃんけんで。「一人ずつ」ですよ」 「……へーい」 　にこ、と鑓水が笑う。絶対そのまま寝る気はない。顔をひきつらせる沙良を不思議そうに見ている波折は、やはり何もわかっていない。 （ぜったい鑓水先輩、波折先輩のことなんかしようとしてるから！） 　はいはいと素直にじゃんけんい応じる鑓水が恐ろしい。本当に今夜大丈夫かな……と沙良は頭を抱えたくなった。