＊＊＊ 「誰かきた、おはよー！」 　学校について、沙良が教室に向かうと、すでに準備を始めているクラスメートが何人かいた。教室はすっかりお化け屋敷モード。迷路みたいになっていて挨拶をしてくれているクラスメートがどこにいるのかよくわからない。迷路の真ん中にたどり着いて、ようやく仲間を発見する。 「あっ、沙良ちゃんだったのね、おはよー」 「うわ、なんかすごい。おはよー」 　お化け役の生徒はすでにお化けの格好をしていた。結月は腕を真っ赤に塗ってにこにことしている。 「――ぎゃっ」 　みんなのすごい格好に気を取られている沙良の首に、なにかがひたっと当たる。びっくりして振り向けば、クラスメートの茉由がにやにやとしていた。手にはこんにゃくのついた釣り竿。 「……古典的」 「なにげに古典的なコレがびっくりするもんだよ」 「あーめっちゃびっくりした」 「はいはい神藤くん、神藤くんも準備！」 「はーい」 　茉由に急かされて、沙良も鞄から自分の道具を取り出す。沙良は自分が出て行くのではなく、オーディオでお経を流すだけのため準備という準備は必要ないのだが、とりあえず格好だけ。ためしにお経を流してみれば、みんながわざとらしく悲鳴をあげながらゲラゲラと笑う。 「あー、ねー、神藤くん！　生徒会長ちゃんと誘った!?」 「鑓水先輩は!?」 「可織様も！」 「月守さんくるー？」 　みんなは生徒会のメンバーがくることを楽しみにしているらしい。やたらと顔面偏差値が高い生徒会のメンバーは、それぞれにファンがついている（ちなみに月守はふくよかなためゆるキャラとして人気があるようだ）。沙良が「はいはい」と適当に返事をすれば、やったー！と歓声があがる。 　そうこうしているうちに、学園祭スタートの時間も近づいてくる。いよいよだ。はじめての学園祭、放送で学園祭スタートのアナウンスが流れると、学園中から歓声があがりだした。