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リビングにいくと、昨日と同じように洋之が朝食を用意していてくれた。思い切り裸の波折を見られてしまったためか気まずさを感じながら沙良は席についたが、気にしているのは沙良だけらしい。洋之も波折も、平然としている。
「沙良の有志発表はお昼すぎだったっけ」
「うん」
「夕紀が見に行くっていってたぞ」
「まじか」
飄々と話しかけてくる様子は、本当に洋之は「そういったこと」を気にしていないようで。自分だったら息子が同性とセックスしたあとの姿なんてみたら動揺する、と思っている沙良は、改めて洋之をすごいと思った。
「波折くんは、沙良が楽器演奏しているところみたことある?」
「はい、ピアノを弾いているところを」
「お~そっか。上手だろ~沙良。母親譲りなんだ」
「ええ……沙良は演奏しているときは人が変わったみたいで」
「だろ~。益々惚れちゃうんじゃないか、波折くん」
「……っ」
当人たちが沙良とは裏腹に全く別の話題で盛り上がっている。しかも、自分の話題。沙良はそんな彼らの会話にむず痒さを感じて「やめてくれ~」と心の中で叫びながら聞いていることしかできなかった。
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