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*** 「沙良……おい、沙良。起きろ」 「んー……」  ゆさゆさと身体を揺さぶられる。瞼の裏が、明るい。朝が来たのか……と沙良は気付いたが、布団の中が気持よくて起きる気分になれない。沙良は自分を揺すってくる手を軽く払いながら唸って、もぞもぞと布団にもぐる。 「遅刻するぞ」 「んん……もうちょっと……波折せんぱいー……」 「その波折先輩と昨日何をしたのか知らないけど、起きろ、沙良。今日も学園祭だろ」 「……ん?」  あれ、と沙良は瞼をあける。目の前に、くうくうと寝息をたてて寝ている波折。起こしてきているのは波折じゃない……? ということは、 「……うあっ!? ちょっ、父さん」 「おはよー沙良。昨晩はお楽しみでしたね」 「はっ!? あっ、いや、その」  ばっと振り向けば、洋之がにやにやと笑って見下ろしていた。沙良は「ハハ、」と苦笑いするしかない。だって、今の自分は裸の波折をぎゅっと抱きしめているなんて「事後です!」と宣言しているような状況なのだから。 「ん……」 「あっ、波折先輩」  沙良がだらだらと冷や汗を流していれば、波折が身動ぐ。起きちゃう、起きちゃうぞ、と沙良が焦っているうちに、波折はあっさりと目を覚ましそして洋之を見上げた。「んー……」としばらくぼやいて、ぼんやりと洋之を見つめる。 「……おはようございます、おとうさま」 「おはよう、波折くん」  へにゃ、と笑った波折に洋之は笑顔で挨拶を返した。なんでおまえらそんなに普通なの、と沙良は突っ込みたい気持ちでいっぱいだ。 「はやくふたりともリビング来いよー。飯冷めるからな。服は着て来い」 「はい……」  洋之があっさりと部屋を出て行ってしまう。やばいちょーきまずい、と沙良が頭を抱えていれば、波折がつんつんと唇で頬をつついてきた。 「沙良も、おはよ」 「……おはようございます」  うわくそ可愛い最悪。なんかどうでもいいや、となって、沙良はぽいっと布団をめくりあげた。

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