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「沙良……おい、沙良。起きろ」
「んー……」
ゆさゆさと身体を揺さぶられる。瞼の裏が、明るい。朝が来たのか……と沙良は気付いたが、布団の中が気持よくて起きる気分になれない。沙良は自分を揺すってくる手を軽く払いながら唸って、もぞもぞと布団にもぐる。
「遅刻するぞ」
「んん……もうちょっと……波折せんぱいー……」
「その波折先輩と昨日何をしたのか知らないけど、起きろ、沙良。今日も学園祭だろ」
「……ん?」
あれ、と沙良は瞼をあける。目の前に、くうくうと寝息をたてて寝ている波折。起こしてきているのは波折じゃない……? ということは、
「……うあっ!? ちょっ、父さん」
「おはよー沙良。昨晩はお楽しみでしたね」
「はっ!? あっ、いや、その」
ばっと振り向けば、洋之がにやにやと笑って見下ろしていた。沙良は「ハハ、」と苦笑いするしかない。だって、今の自分は裸の波折をぎゅっと抱きしめているなんて「事後です!」と宣言しているような状況なのだから。
「ん……」
「あっ、波折先輩」
沙良がだらだらと冷や汗を流していれば、波折が身動ぐ。起きちゃう、起きちゃうぞ、と沙良が焦っているうちに、波折はあっさりと目を覚ましそして洋之を見上げた。「んー……」としばらくぼやいて、ぼんやりと洋之を見つめる。
「……おはようございます、おとうさま」
「おはよう、波折くん」
へにゃ、と笑った波折に洋之は笑顔で挨拶を返した。なんでおまえらそんなに普通なの、と沙良は突っ込みたい気持ちでいっぱいだ。
「はやくふたりともリビング来いよー。飯冷めるからな。服は着て来い」
「はい……」
洋之があっさりと部屋を出て行ってしまう。やばいちょーきまずい、と沙良が頭を抱えていれば、波折がつんつんと唇で頬をつついてきた。
「沙良も、おはよ」
「……おはようございます」
うわくそ可愛い最悪。なんかどうでもいいや、となって、沙良はぽいっと布団をめくりあげた。
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