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――――― ――― ―― *** 「あ、あの……ご主人さま……」  鑓水が波折のことを全て知ってから、数日たったある日。淺羽は波折と鑓水の二人を自宅へ招待した。積もる話もないままに二人が連れて来られたのが、寝室。淺羽は波折を引っ張ってベッドに座ると波折の服を脱がし始める。 「そろそろね、色々とやろうと思って。だから、その前に」 「……」  淺羽が波折の服を脱がしてゆくのを、鑓水は黙ってみていた。  色々ってなんだ、と聞きたいところだが、なんとなく察しがつく。そろそろ、篠崎が殺されたという事実が公にでるだろう。鈍い沙良でも、波折につきまとっていた篠崎が死んだとなれば、何かしら勘付くかもしれない。そこから、淺羽は沙良に何かを仕掛ける。  止める術が、自分にはない。今の自分は淺羽の奴隷も同然だ、と鑓水はただ拳を握りしめることしかできない。 「おいで、鑓水くんも。君も俺達の仲間だ。一緒に愉しもうじゃないか」  え、と鑓水が固まる。淺羽と、三人でやるの? と。  波折が淺羽に抱かれているところは、一番見たくなかった。淺羽には、絶対に勝てないからだ。もはや愛とか依存とか、そんなものではない淺羽と波折の二人の間に、自分は入っていく余地などない。それを見せつけられながら、波折を抱くなんて嫌だった。 「や……や、です、ご主人さま……」 「なんで? 二人から愛されるの、気持ちいいと思うよ?」 「けいたに……ご主人さまに抱かれているところみられるの、はずかしい……」  そうだろうな、と鑓水が心の中で舌打ちをする。淺羽に抱かれているときの波折は、鑓水に抱かれているときよりも数倍乱れる。波折もそれを自覚しているのか、と思うと苛立った。淺羽に抱かれていると俺に見られたくないという思いなんか吹っ飛んで乱れるのだと、波折がわかっている――それに、ムカついた。 「あっ……ご主人さま……だめっ……」 「……」  ムカつく。ムカつくムカつく。俺は淺羽に堕ちたんじゃない。波折に堕ちたんだ。淺羽の好き勝手されるのが、本当にムカつく。 「……波折」 「……けいた?」 「そいつばっか見てんなよ……!」 ――淺羽が、嗤う。  鑓水は二人に近づいていって、波折の唇を奪った。波折がビクリと震え、目を見開かせる。 「んっ……!?」  鑓水は淺羽の手を払い、自らの手で波折の服を脱がし始めた。波折が慌てて鑓水のことを押しのけようとするが、激しいキスに翻弄されて身体が上手く動かない。舌を絡めとられ、頭のなかがふわふわとしてきたところで、やっと解放される。 「けい、た……」 「……俺の前で、あんまりご主人様ご主人様して欲しくないんだけど」 「……っ、」 「おまえがそいつから離れられないのは知ってるし、理解しているけどさ……俺だって嫉妬しないわけじゃないんだよ」  ……特に、淺羽は気に食わない。沙良だったら、まだいい。この男は波折のことを道具として支配している。嫌いだ。淺羽に下ってはやるけれど……嫌い。嫌いな奴に骨抜きにされている波折のことなんて、見たくない。 「俺のほうが、波折のこと気持ちよくさせてやれる」  鑓水が、波折の首筋に吸い付いた。嘲笑うような声が聞こえて、鑓水は淺羽を睨み上げる。淺羽はにやにやとしながら波折の下着に手を突っ込んで股間を揉みしだき始める。 「あぁんっ……! ご主人さまっ……」 「……俺を、呼べよ、波折……そいつよりも、俺のことを……」 「……っ、あっ」  鑓水が、ここまで強い独占欲を現すことは珍しい。少し苛立った様子で、それでも激しく自分を求めてくる鑓水に、波折はくらくらとしてしまう。  でも、鑓水だけには集中できない。この身体をつくりあげた淺羽が、敏感なところを触ってくる。ぞくぞくと快楽が這い上がってきて、勝手に声が零れてしまうのに……声を出せば、鑓水が嫉妬する。  どうしようもない。沙良と鑓水の二人に抱かれたときとは、違う。水面下で火花を放つ二人に挟まれて、どっちになびくこともできない。でも、身体はどんどん感じてきてしまって、狂ってしまいそうになる。波折は必死に声を堪えるが……耐えれば耐えるほど、苦しい。 「んぅっ……」 「目、開けてろ……」  鑓水が波折の唇を舐める。そして、甘咬みする。至近距離で視線を交えながら、キスをするわけでもなく唇を責められる。呼吸もまともにできなくて、心臓がどくどくと高鳴って……声をあげることもできない。淺羽にアソコに与えられる刺激も相まって、もう、ダメ。波折は我慢の限界といったふうに鑓水に口付けたが、鑓水は「だめだ」というように波折の頭を掴んで唇を離す。そしてまた、唇を責める。 「けいた……キス……したい……」 「俺のことだけを見るようになったらな」 「そん、なぁ……」  波折の瞳から、ぽろぽろと涙が零れ出す。ぐすぐすと泣きながら、波折は鑓水の服をぎゅっと掴んで、必死にキスをねだった。それでも鑓水はキスをしない。鑓水自身、キスがしたくてたまらなかったが、波折の意識をどうしても自分に向けたい。波折が自分を求めるように、焦らして焦らして、焦らしまくる。 「けいた……おねがい……けいた……」 「――あれ、波折。俺のことが一番だよね?」 「っ……ごしゅ、じんさま……」  波折が鑓水の名を連呼するようになったとき。淺羽が、ぎゅっと波折の乳首をつまみ上げて耳元で囁いた。びくんっ、と波折が跳ねて、振り返る。もう少しだったのに……と鑓水がキッと淺羽を睨みつければ、淺羽はにやにやと笑うばかりであった。 「うぁっ……」  鑓水が波折の臀部に手を回す。そして、淺羽に触られていないほうの乳首にも。感じるところ全てを触られて、波折は声にならない声をあげながら、身体をばたばたとさせて藻掻いた。淺羽に触られると調教されきった身体が疼いてイッてしまいそうになる、のに……そうすれば鑓水が睨みつけてくる。その視線でまたゾクゾクとしてしまって、そして淺羽が横槍をいれてくる。それの、繰り返し。 「もう、いやぁ……」 「こんなにぐちゃぐちゃに濡れているのにね?」 「うう……」  くちゅくちゅと音が聞こえてくる。波折はもう感じきっていて、触ってくださいと言わんばかりに脚をぱかりと開いていた。ただ、背後にいる淺羽、そして前にいる鑓水。どちらにも寄りかかることができず辛そうだ。どちらかに寄りかかれば、また怒られる。でも、もう真っ直ぐにしているのも辛い。ふらふら、ふらふら、虚ろな目をしながら波折は「あ、あ、あ、」と儚い声をあげてイッてしまった。  がく、と波折の身体が後ろに倒れこむ。鑓水がハッとして、波折の腰を引き寄せて自分へもたれかからせた。波折は「はー、はー、」と荒く呼吸をして鑓水の首元に顔を擦り付ける。やっとこうしてすがりつくことができた、と波折は鑓水にぎゅっと抱きついた。

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