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*** 「ん……」  ふと波折が目を覚ますと、身体が布団に包まれていた。沙良は波折を抱きしめながら、すうすうと寝ている。あどけないその寝顔をみているときゅんとしてしまって、波折はみじろいだ。もぞもぞと手を沙良の背に回して、ぎゅっとすがりつく。 「……なおり、せんぱい?」 「あっ……ごめん、おこした?」 「ううん、だいじょうぶ……」  沙良が、へへ、と笑う。思わず波折はとん、と触れるだけのキスをした。そうすると沙良も同じようなキスを何度かしてくる。 「先輩。週末、俺の家きてくれますか」 「うん」 「へへ……駅まで迎えにいきますね。危ないから」 「大丈夫だよ……」 「いいから」  沙良は半分寝ぼけているのかもしれない。ぼーっとした瞳で波折をみつめて、言葉もどこか舌っ足らず。ぼやぼやとした会話をしたあと、またぱたりと瞼を閉じて眠ってしまう。 「沙良」  波折は沙良の瞼にキスをする。そして、じっとその寝顔をみつめた。  今のこの時間が、幸せだなと思うから。時が止まってしまえばいいのに、と思うけれど。そんなに世界は、やさしくない。

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