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第1話
派手な奴はダメ。
ヤリチンもビッチも論外。
処女は絶対条件。
童貞なら尚よし。
俺の性癖に刺さるのは・・。
忙しなく雑踏を行き交う人の群れを眺めている一人の男がいる。
「あの・・すみません・・。実は初めて東京に来たんですけど、道を伺ってもいいですか?」
世の中に悪い人間など存在しないと信じ、山も谷もない平坦で穏やかな生活を今まで過ごしてきたような、真っさらな人間がいい。
この男みたいに。
都会に住んでいると、こういう人間に会えるのはそうそうない。
逃がしてやるものか。
その男は胸の中でニヤリと笑い、話しかけてきた男の持つメモ紙を覗き込んだ。
「道が複雑だから連れて行ってあげる」
「そ、そんなっ、申し訳ないです」
「いいから」
男は彼の手首を掴んで引っ張るように歩き出す。歳は三十手前くらい。黒髪色白で見るからに真面目そうだ。
こういう真面目人間に快楽と痛みを同時に教え込んだら、どんな風に啼くんだろう。
「あ、あのっ、手───」
顔には出さないが、その姿を想像したら握る手に力が入ってしまったようだ。彼に振り返れば、痛みに眉を寄せていた。
ああ、ここが外じゃなきゃ今すぐ犯してやるのに。
力を弛め、でも手を離さず歩き続ける。
メモ紙に書かれていたのは、オフィスビルの名前だった。
転職?支店から本社に出向?
初めての都会にドキドキワクワクしてたんだろうけど、残念。
こんな男に目をつけられて可哀想に。
十分くらい歩いて、二人はあるマンションのエントランスをくぐる。
「えっ、ここ違うよね?これマンションだよね?」
エレベーターが降りてくるのを待っていると、彼はキョロキョロと辺りを見回して、異変に気が付きはじめたようだ。
「離してくれるかな?」
気づいてしまったなら仕方ない。
男は握る手に力を込めて、ドアの開いたエレベーターへ彼を連れ込んだ。
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