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第29話
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男に快楽と痛みを体に叩き込まれ、どの位の月日が過ぎただろうか。
外の様子も、時間さえ確認できないこの部屋にいては予想もできない。
舌のピアスと性器のピアスが安定した頃には、智則の思考は麻痺しはじめていた。
男の好きなときに好きなだけ好きなようにされる事以外、不自由な生活ではないと思いはじめていた。
言うことさえ聞いていれば優しい。
自分はこのままここで一生過ごすのか──。
そう、思うことが多くなってきた矢先だった。
「いっ、あっ、アアアッ!」
男を深くまで受け挿れ、乳首を千切れんばかりに噛まれながら射精した智則は快楽と痛みで意識が曖昧になる。
「気持ちよかった?」
男の言葉に怠く頷いた智則は性器が抜けていく感覚に切なく息を吐いた。
「智則、俺明日から少しの間留守にするから」
息の上がった智則を宥めるように頭を撫でながら男は耳元で囁いたが、意識が朦朧としている智則からの返事はなかった───。
数時間後、智則の瞼がゆっくり開いた。
ぼやっとする視界が段々と鮮明になり、もやが晴れる。
渇いた喉に唾を飲み込むと、軋む体を起こした。
「……なんか静かだ」
感じる空気が静まり返っている。
智則はベッドから降り、部屋のドアノブをそっと回した。
隙間から見えるその先の視界をぐるりと見渡すと息をゆっくり深く吐き出して、ドアを開けた。
「…やっぱ居ない」
完全に男の姿がないことを確認した智則は不安と期待に胸がざわついた。
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