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【序】
「……というプランで、当日の流れはよろしいでしょうか」
「えぇ。ありがとうございます」
幸せだ。
幸せオーラ全開だよ。
明日は人生の晴れ舞台♪
なんてったって結婚式を控えてるんだからね!
……見ている俺まで幸せになってしまう。
俺はウェディングコーディネイター 春道 列樹
一生に一度の夢舞台 結婚式のお世話をするのがお仕事だよ。
結婚は人生の墓場だ!……なんていう奴がいるけれど。
墓場に行く奴……じゃなかった★
墓場に行くお客様が、こんなに幸せな顔で笑うか?
それでも墓場って言う奴は、俺の前に来い。直々説教してやるよ。
「ところで春道さん」
「はい!何でしょう。壬生 様」
にこり
柔らかに微笑んだ幸せオーラ全開のこの方が、壬生 忠岑 様。
新郎で、日本屈指の大企業 壬生グループ 御曹司
駆け出しの俺をご指名して下さった、有難いお客様である。
粗相のないようにしなくちゃねっ!
「アイス溶けちゃいますよ」
「ワァァっ」
ガサガサガサッ
慌ててテーブルの書類を掻き集めた。
溶けかけたアイスが器から垂れて、危うく大事な書類を汚すところだった。ギリギリセーフ
「何とか無事でしたね。はい、あーん♪」
あーん♪
ぱくっ
……って~★
俺っ、流れでアイスクリーム食べちゃった。それも壬生様のアイス、壬生様のスプーンでっ。
「うわーッ」
「春道さん、目立ってますよ」
「あわわわわ」
ここ、オープンカフェだったー!
リラックスできる所で打ち合わせを……との壬生様のご要望で、パフェの美味しいカフェにやって来てるんだった。
公衆の面前で、あーん……だなんてっ。
顔が熱い。
何やってんだよ、俺ッ
キョロキョロ周囲を見回すが、俺達の不審行動に気づいてはいないようだ。
縮こまってキョロキョロしてる俺の行動が不審者か?
「春道さん」
「ひぃっ」
「顔、赤いですよ」
「そそ、そうですかっ」
「少し冷やした方がいいと思います。はい、あーん♪」
あーん♪
……って~★
またやっちゃった。
なんて学習能力ないんだ!
「早く食べないと溶けてしまいますよ」
チョコのたっぷりかかったバニラアイスのスプーンが、目の前で待ち受けているー!
壬生様の満面の笑顔と共に
お願いだから、もう勘弁して~!!
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