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Ⅰ 会社がないっ!!②
倒産って、どういう事ッ
会社がなくなったら結婚式を挙げられない。
壬生様の結婚式もっ!
「落ち着け!春道」
ハッと見上げる。
「……赤築先輩」
「タクシー拾って、会社まで壬生様が連れて来て下さったんだ。頭下げろ」
「あ、ありがとうございます」
「大丈夫ですか、春道さん」
「はい……」
左手が暖かい。
掌に残った感触……
タクシーに乗っている間、ずっと手を握ってくれてたんだろうか。
「春道、社長室に行くぞ」
「駈 、俺も同席していいか?」
肩を叩いて、壬生様が赤築先輩を名前で呼んだ。
「お前も無関係じゃない。この会社は壬生のグループ企業だからな」
「同意を感謝する」
二人は従兄弟同士だ。
エレベーターが上昇する。
「詳細が分からない。とにかく社長に話を聞こう」
トントントンッ
返事を待たずに開け放たれた社長室のドア
静寂が支配する。
ガラスの越しの陽光だけが煌めいて、広い個室に影を落とした。
社長がいない。
パンパンパーンッ
クラッカー★!?
社長室の机
開けっぱなしのノートパソコンから、音だけ聞こえた。
『おぉ、め、で、と、うぅ~!!』
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