9 / 25

Ⅴ 会議室の電話①

「あぁ……順調だ。問題ない……明日は……いや、お前が決める事だな」 中に誰かいるのか。 室内で声が一方的に喋っている。電話だろうか。 会議室前 「……忠岑」 名前を呼んだ。 壬生様の…… ハッとする。 声! 壬生様を名前で呼ぶ、この呼び方 赤築先輩 ドアの隙間から中を伺った……刹那にドキンと心音が跳ねた。 「株の買収はメールしただろう。早急に指示を出せ」 株って…… 会社がピーちゃんに乗っ取られたのは、ピーちゃんが自社株を買い占めたからだ。 壬生様と赤築先輩は繋がっている? 株による会社買収も、二人が裏で事を進めていたのならば…… 俺とピーちゃんを結婚させようとしているのは、壬生様 俺の気持ちが煩わしくて…… バサンッ 持っていた資料が手から滑り落ちて、床に散らばる。 (これっ!) 今朝のカフェでの打ち合わせで、テーブルの資料を慌てて掻き集めたから。 壬生様の仕事の資料が混じっていた。間違えて持っていたのだ。 見てはいけないのだけど。 株取引のリストだ。 紙面に見知った名前がある。 赤築 駈、と…… 「誰かいるのか?」 会議室から足音が近づいてくる。 床の資料を拾い集めて駆け出した。 振り返っちゃいけない。 でも、俺…… どこに走ればいいんだろう……

ともだちにシェアしよう!