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Ⅶ 結婚行進曲
早朝の教会に陽光が差した。
盛大に流れる楽章は、
メンデルスゾーン 結婚行進曲
いま、扉が開かれた。
純白のドレス
純白のベールに包まれた俺が、バージンロードを一歩
一歩
厳 かに歩む。
一人と一羽だけの結婚式
キラキラ、朝の光がステンドグラスに乱反射する。
バサバサァー
神前で
止まり木の青い小鳥が羽ばたいて、俺の肩に止まった。
『きれいだよー♪僕のお嫁さん』
「……うん」
俺はピーちゃんの妻になるんだ。
「77さん。汝、健やかなる時も病める時も、喜びの時も悲しい時も、共に助け合い、命ある限り永遠 の愛を誓いますか」
『はーい、誓いまーす!』
神父様の誓いの言葉に、ピーちゃんが囀ずった。
「春道 列樹さん。汝、健やかなる時も病める時も、喜びの時も悲しい時も、共に助け合い、命ある限り永遠の愛を誓いますか」
誓うんだ……
俺はピーちゃんの妻
ピーちゃんと結婚するんだ。
ピーちゃんと結婚して、壬生様に結婚式を挙げて貰うんだ。
幸せになってください
壬生様………
「………………はい、ちかいま」
バタンッ!
静寂に吹き込んだ風の音
教会の扉が開いた。
「迎えに来ましたよ、春道さん」
鼓動が胸を押し潰す。
ドキドキ、ドキドキ
熱い血流が心音に流れて、止まらない。
「……どうして」
あなたがいるんですか?
「君を愛しているからですよ」
微笑んだあなたが手を伸ばした。
ブーケを放り投げた。
俺の手があなたを求める。
あなたの手を掴みたい。
握りたい。
もう一度
あなたの温もりを感じたい。
あなたの体温で、俺を包んでください。
「壬生様!」
青い小鳥が飛び立った。
ステンドグラスの光に青い羽が舞う。
駆け出してウェディングドレスの白い裾につまずいた俺を、逞しい腕 が受け止める。
……俺の手を強く握って
「私を見る君はいつも泣いてばかりだ。……笑ってほしいのに」
熱い舌が、頬の涙を拭った。
結んだ手と手を離さぬように
離れぬように
違うんです!
俺が泣くのは嬉しいから。
あなたが俺を迎えに来てくれたから
伝えたいのに涙が止まらない。
「分かってます」
足が宙に浮いて……
一瞬の浮遊感の後、求めていた温もりに包まれる。白いタキシードの壬生様に抱かれている。
お姫様抱っこされてる。
間近に迫る黒曜石の双眸
瞳が降りてくる。
淡くきらめいて、優しく、静かに……
「貴方の愛に、永遠の誓いを」
青い羽の舞い降りる教会で
光の中、俺達は口づけた。
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