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Ⅷ 愛しさと切なさと……
俺は壬生様の腕に抱かれている。
重くないかな?とか
どこ行くの?とか
ほんとに結婚するの?とか
とっても幸せな甘い気持ちで、壬生様の瞳を見上げた。
もう泣かないよ
泣いたら壬生様に心配かけちゃうから
………でも
だけど………
憂う眼差しを瞼で隠した時、耳元に吐息が降ってきた。
「問題は全てクリアしました」
くすぐるみたいに。
低音が囁きかける。
「株は買い戻しましたので、77さんは君に手出しできません」
さすがは日本屈指の大企業だ。
でも……
「ありがとうございます。……でもっ」
問題は……
もう一つ
どうしても逃れられない問題がある。
避けては通れない。
解決しなければならないが、それが解決できたら……愛する気持ちを傷つけてしまう。
俺は壬生様を愛しています。
ほんとうに、ほんとうに好きだから、愛する気持ちが分かります。
愛する切なさが分かります。
人を愛する気持ちで人を傷つけたら、愛する気持ちが嘘になる。
壬生様を愛する気持ちを嘘にしたくない。
誰かを傷つけてまで、あなたを閉じ込めたくないんです。
偽りの愛の器に、あなたはいちゃダメです。
そこは、どんなにどんなに愛を注いでも
こぼれていってしまう
鳥籠だから………
あなたがいなくなっても、ずっと、ずぅーっと、あなたを愛し続けます。
もう泣かないよ
泣いたら壬生様に心配かけちゃうから……
「俺は、あなたを愛せません」
ほんとうに愛してるから、愛さない。
離れても、ずっと愛しています。
永遠に……
「あなたは、奥様と幸せになってください」
「……春道さん」
「結婚式、挙げてくださいね」
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