18 / 25

Ⅸ 天国と地獄⑤

うわアァアァァーッ!! 化粧した目の前の人は、壬生様のスマホの写真とそっくり こんなに近くにいて気づかなかった…… 「先輩が壬生様の奥様だったんですかぁーッ」 「あほか。な訳ねーだろ。んなガタイのいい花嫁がどこにいるっ」 ……どこって、俺の目の前に~★ 「壬生様とお幸せになってください!」 先輩だったら心配ない。 従兄弟同士で夫婦 息もピッタリ合っている。 「やめんかッ、気色悪ィ~」 赤いウェディングドレスの先輩の顔が、心底青ざめているのは、どうして? 「俺はαだ。α×αで『番』になってどうする?不毛だ」 「あ……」 「駈は、私のために花嫁役を演じてくれたんですよ」 「お前のためじゃなくて、壬生グループのためな」 真っ赤なベールの下で口角が上がった。 「大企業ともなると、内部にも敵対勢力が潜んでいるんです」 隙あらば会社を私物化し、私腹を肥やそうとする不埒な輩が…… 「敵対勢力を一掃するため私と駈で仕組んだのが、この結婚式だったんです」 「一流企業の御曹司の挙式ともなれば、そこに目をつけて勢力拡大に画策する奴が必ず出てくる。株の買収も、そういったところだ」 つまり、結婚式自体が架空 壬生様に、ご結婚の予定はない。 「そういう事です」 チュッ まるで心の声を読んだかのようなタイミングで、唇が降りてきて~ 「耳まで真っ赤♪可愛いですよ」 「忠岑~。俺、いるんだけど~」 「まだいたのか」 「やってらんねー」 赤築先輩の投げた薔薇のブーケが、ふわりと手の中に降ってきた。 「勝手にどーぞ、お幸せに~♠」 「駈、77についての報告を聞いていない」 擦れ違い様、壬生様が声を潜めた。 「あれなら心配いらねぇ。壬生の敵ではない。何なら今から話そうか。長話になるがな」 「春道さんとの時間の方が大事だ」 堂々とそんな事を言われたら俺、赤面してしまう。 「だろうな」 呆れながらも想定内の返答だったのか。 先輩にまで、そんな風に扱われてしまって嬉しいやら恥ずかしいやらで~ うぅ、穴があったら入りたいよぅ~ 「春道さんの穴に挿れるのは、私の役目です」 「……へ?」 耳朶をさらった熱い吐息 俺ッ、とんでもない事を言われたようなーッ★

ともだちにシェアしよう!