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Ⅸ 天国と地獄⑤
うわアァアァァーッ!!
化粧した目の前の人は、壬生様のスマホの写真とそっくり
こんなに近くにいて気づかなかった……
「先輩が壬生様の奥様だったんですかぁーッ」
「あほか。な訳ねーだろ。んなガタイのいい花嫁がどこにいるっ」
……どこって、俺の目の前に~★
「壬生様とお幸せになってください!」
先輩だったら心配ない。
従兄弟同士で夫婦
息もピッタリ合っている。
「やめんかッ、気色悪ィ~」
赤いウェディングドレスの先輩の顔が、心底青ざめているのは、どうして?
「俺はαだ。α×αで『番』になってどうする?不毛だ」
「あ……」
「駈は、私のために花嫁役を演じてくれたんですよ」
「お前のためじゃなくて、壬生グループのためな」
真っ赤なベールの下で口角が上がった。
「大企業ともなると、内部にも敵対勢力が潜んでいるんです」
隙あらば会社を私物化し、私腹を肥やそうとする不埒な輩が……
「敵対勢力を一掃するため私と駈で仕組んだのが、この結婚式だったんです」
「一流企業の御曹司の挙式ともなれば、そこに目をつけて勢力拡大に画策する奴が必ず出てくる。株の買収も、そういったところだ」
つまり、結婚式自体が架空
壬生様に、ご結婚の予定はない。
「そういう事です」
チュッ
まるで心の声を読んだかのようなタイミングで、唇が降りてきて~
「耳まで真っ赤♪可愛いですよ」
「忠岑~。俺、いるんだけど~」
「まだいたのか」
「やってらんねー」
赤築先輩の投げた薔薇のブーケが、ふわりと手の中に降ってきた。
「勝手にどーぞ、お幸せに~♠」
「駈、77についての報告を聞いていない」
擦れ違い様、壬生様が声を潜めた。
「あれなら心配いらねぇ。壬生の敵ではない。何なら今から話そうか。長話になるがな」
「春道さんとの時間の方が大事だ」
堂々とそんな事を言われたら俺、赤面してしまう。
「だろうな」
呆れながらも想定内の返答だったのか。
先輩にまで、そんな風に扱われてしまって嬉しいやら恥ずかしいやらで~
うぅ、穴があったら入りたいよぅ~
「春道さんの穴に挿れるのは、私の役目です」
「……へ?」
耳朶をさらった熱い吐息
俺ッ、とんでもない事を言われたようなーッ★
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