83 / 87

第83話

ピンポーン 「はーい!」 リビングでソワソワしながらご飯を見ていると、ふいに玄関の音が鳴った 時計を見てみると朝の8時 こんな早くから郵便?と不思議に思いながら印鑑を手に持ち玄関へ向かう ガチャ、と扉を開けた途端見えた姿に咄嗟に扉を手前に引く すると、その人物は閉められるのが分かってたかのように扉と壁の間に自身の足を差し入れる 「朱雨、話がある」 「俺はない! ……………………帰ってよ、玲」 そこには意識の戻っている玲がいた 帰れといった俺の話を聞いていなかったかのようにさらに足を深く入れ、扉をこじ開けようとする 「俺はある! 頼む、朱雨…………話をしよう」 「いやだ…………絶対や…………」 ググッ……と手前に扉を引くも固まったかのようにビクリともしない扉 俺が全体重をかけて手前に引いてるのに全く動いてくれない それどころか徐々に玲の方へと開いていく 「あ、いや…………だめ………………」 「……捕まえた…………朱雨」 人が一人入るくらいまで空けられるとその隙間を縫って玲が中へと入ってくる すると迷いなく俺をその腕へと閉じ込める 久々の玲の匂い、たくましさ、温かさに涙が込み上げる 弱く拒否してみたが、さらに強く抱きしめられただけだった 耳元で、愛おしそうに呟かれる言葉に胸が切なく痛む 恋してはダメだと分かっているのに…… やっとその温もりを手放せるようになったのに………… どうして帰ってきたの………………玲…………

ともだちにシェアしよう!