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嵐の夜

窓の外は強い風。 真中一颯(まなか いぶき)は暗い空を窓からぼんやりと眺めていた。 彼は部屋の中で、雨の音を聴いて過ごすのが好きだった。 昔から一人でいるのが好きで、友達と遊び歩くこともせず、部屋で勉強をしているか、本を読んで過ごしていた。 母は反抗期の無い一颯がお気に入りだったが、父は大人しすぎる一颯を心配した。 「弟ほどではなくても少しは羽目を外したらどうだ?」と、いつも渋い顔をして言う。 二つ下の弟の駿助(しゅんすけ)は間逆で、友達が多く社交的で、高校生になってからは反抗期も相まって一颯とは殆ど話をしなくなった。 駿助は背が高く、体格も良い。 茶色に染めた髪にピアス。父に似た派手な顔立ちの野生的な男前だった。女にも男にも人気があった。 一颯は母に似て、華奢で色が白く、切れ長の一重の和風で地味な顔立ちをしていた。 本人は意識していないが、人を寄せ付けない雰囲気があった。 今夜は両親とも家にはいない。 二十年めの結婚記念にと、自分達のことは気にせず旅行にでも行ってくるよう勧めたのだが、台風と重なってしまい、延泊することになった。 さっき両親から電話がかかってきたが、弟も自分も平気だと言った。 本当は駿助は家にはいないのだが。大方、女の所か悪友達と一緒にいるのだろう。 一颯は嵐の夜を一人静かに過ごすはずだったが、ガチャッと玄関のドアが開く音と、悪態をつく弟の声が聞こえてきた。 玄関に行くと雨でびしょ濡れの弟が立っていた。 「待て。タオルを持って来るから」 慌ててタオルを取りに行く。 「こんな雨の中、なんで帰ってきたんだ? 友達の家に泊めてもらえば良かったのに」 タオルを渡しながら言うと、じっと一颯の目を見ながら駿助が答えた。 「……お前が一人になるだろ」 一颯は駿助が苦手だった。 話さなくなったのは反抗期だからだけじゃない。 今みたいに、二人きりの時に弟は一颯を見つめることが多くなった。 この目が苦手だ。 ただ黙って、じっと一颯を見ている。 暗く、淀んだ熱のこもった目で。 本能的に逃げたいと感じてしまう。 せっかく一人で過ごせると思ったのに……一颯は憂鬱な気持ちになった。 「何か食べるか?」 「いい。食べてきた」 「……」 じっと見るくせに、会話は続かない。「帰ってこなくてよかったのに」と、心の中で独り言ちて、一颯は自分の部屋に戻った。 台風は深夜に通過するらしい。 窓の外は風と雨がさっきよりも酷くなってきていた。 部屋で静かに本を読んでいると「ちょっといいか?」と、駿助が入ってきた。 一颯の部屋に駿助が入ってきたのは三年ぶりになるだろうか。 「……」 「何?」 部屋に入ったところで立ったまま、またじっと見られる。 いい加減うんざりして聞くと、弟はようやく口を開いた。 「橘の兄貴から聞いた。 お前、家出てくの?」 「え?」 橘の兄は一颯の同級生で、唯一話すクラスメイトでもあった。 「ああ、大学生になったら一人暮らししようと思ってる」 「……行くなよ」 「え?」 「お前に一人暮らしなんか無理だろ? コミュ症のクセに」 「なっ!?」 「ろくに人付き合いも出来ない奴が大学デビューかよ。止めとけって。恥かくだけだ」 弟のあまりな言い様に、一颯の頬に怒りで朱が走る。 「お前には関係ないだろう。友達付き合いの心配もしなくていい。橘とは同じ大学になるだろうし」 「はぁ?」 「お前だって清々するだろ? 俺もお前と離れられて清々するよ。ほら、さっさと出ていっ……!?」 ドアを開けて駿助を部屋から追い出そうとしたら手首を掴まれた。 「痛っ!」 その強さに眉を顰める。 「何を───っ!?」 頭一つ分背が高い弟を見上げれば、凍りつくような強い瞳で睨みつけられていた。 「……駿助?」 あっと思ったときには、顎を掴まれ口付けられていた。 「んむぅ……やぁ!……あぅ」 ウブでキスもまだの一颯に、駿助は舌を絡ませて唾液を飲ませ、激しいキスで抵抗する力を奪おうとする。 「やめろっ!!  嫌がらせにもほどがあるぞ! いい加減に……!?」 怒って怒鳴る一颯のシャツを引き裂くようにして裸に剥く。 ベッドに押し倒し、無言で荒々しく愛撫すると、一颯はパニックを起こしたように怒声を悲鳴に変えた。 華奢な一颯の抵抗など、容易く抑え込める。駿助は責める手を緩めない。弟の手が、唇が、一颯の体を這い回る。 一颯の悲鳴は嵐の音にかき消された。 駿助は一言も発さず、無言で一颯を犯した。 嵐のように……弟に抱かれた。 「ひぃっ……あっあぁあああ!……痛っ、いっ……やだ! ……めて、やめて……あっあぁ!!」 一颯の後ろに深々と若く逞しい雄を突き刺し、出し入れをする。 ぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てて、容赦なく抉った。 一颯の悲鳴が、弱々しい啜り泣きに変わった。 ベッドに押し倒し、大きく脚を開かせ、リズミカルに腰を打ち付ける。 お座なりに慣らしただけで挿入したので、一颯の後孔は少し切れて血が出ていた。 「うっ……ひ、やぁ……お願…ぃ……も、やめっ……あっ! あああ!?」 一点を強く突かれて、一颯は大きく仰け反る。 「いやっ!? あ……なに!? アッ……やめっ! アッアア!」 弟は兄の感じるポイントを己の雄で抉るように責め続ける。 「……ッッ!! それ……いやぁ、だ……やめてやめて……! ぅあ…あぁああ……はぁ、ア!」 悲鳴は、熱い喘ぎ声に変わった。 「一颯!!」 「アッ! あああぁあ───ッッ!!」 一颯のモノをしごきながら、一層激しく突き、兄がイッた直後に、弟も兄の中でイッた。 弟に犯され、イッてしまった上に、中出しされたショックで一颯は荒い息のまま唖然としていた。 ズルリ、と駿助が出ていく。一颯の隣にごろりと横になり、ハァハァと荒い呼吸を続ける。 震えながら一颯は体を起こそうとして、ベッドから転げ落ちた。 「おい、兄貴……っ!」 一颯は裸で、震えながら四つ脚になって弟から逃げようとしている。 後ろから中出しされた駿助の精液を垂らしながら…… 駿助の喉がゴクリと鳴り、若い雄が再び硬く立ち上がりー颯を求めた。 ベッドから降りた駿助に尻を掴まれ、左右に開かれた。 「やっ……嫌だっ!!」 くぱぁ……と開かれた後孔から、トロトロと駿助の精液が溢れて、一颯の白い腿を伝う。 羞恥にガタガタと震える兄のアナルに弟は再び挑む。今度は後ろから兄の尻を奪った。 「ぃ……やあッ! あぁああっ!」 犬のように這い蹲り、駿助のいいように揺さぶられて、一颯は喘ぎ続けた。 その後もベッドに戻され、体位を変えては何度も何度も犯された。 中出しされた精液で、一颯のアナルは女のアソコのようにぐちゃぐちゃだった。 「ぁあ……もぅいやあ……あ、あ、あぁ! ゆる、してぇ……あぁあ……うぅ、ひ、やっあ! アッアッ……あぁ!」 一颯は泣きながら、鳴いて、許しを請う。 「……はっ……一人で出ていくなんてやめろ! いいな?」 「あ、はぁ……あぁあ……っ!」 「分かったのかよ!!」 ガツンッと強く突かれて悲鳴をあげる。 「ひぃっ!! 分かった……わかっ……た、からぁ」 「……お前は俺といるんだ。卒業したら、俺と二人で住むんだ」 「うんっ……うん……」 「ぜってぇ逃がさねえからッ!……俺のものだ!!」 「あっあ、ひ……あぁあああ!」 背を反らせ、目を見開けば、弟が自分を食い入るように見続けていた。 ───あぁっ! 本能的に気付いていた。 駿助の目には、独占欲と嫉妬、執着と欲望が宿っていたことを。弟は反抗期だと誤魔化して、分からないフリをしていた。 弟の方も兄への肉欲と執着心を忘れるように努めていた。できるだけ顔を見ないように、声を聞かないようにして。 薄いガラス一枚を隔てたような兄弟の関係は、たった一夜の嵐が粉々に砕いてしまった。 「一颯……」 「あ、んぅ……ん」 深く、深く口付ける。 二人の上を、嵐はまだ過ぎ去りそうになかった。

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