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第1話

「歳をとると、身体が言う事をきいてくれなくて困る」とか、「最近、すぐに疲れちまう」とか、佐伯さんは常々愚痴っぽく言われています。 が、僕からすれば「どこがですか?」と思わずにはいられません。 齢三十一。世間では働き盛りの世代なのでしょう。運動神経が悪く、体力に自信がない僕ですが、日々の家事全般と佐伯家に関する事務仕事をこなしても、確かにそれほどの肉体的、精神的疲労は感じません。まだまだ若いのだろうと思います。 けれども、佐伯さんは口でそんなことを言う割には、僕よりも元気なのです。 ……とても恥ずかしいのですが、彼と褥をともにする時に、身をもって実感させられます。 今夜もそうです。搾りきれるところまで搾りきった檸檬のように、精巣に溜まった体液をすべて出しきり、精根尽き果てぐったりとしている僕を、佐伯さんは息を乱しながらも至極愉しげな表情を浮かべながら、ぎゅうっと抱きしめていました。

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