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第2話

汗みずくの素肌と素肌がぴったりと密着し、その境目が曖昧になるような感覚。互いの肉体が発する蒸れた熱が、あたりの空気にまでまとわりつき、熱苦しくてたまらないけれど、ひどく心地が良くて決して離れたくなくて。僕は佐伯さんの細い腕の中で、昂ぶった呼吸を整えていました。 今夜はもう何度、気を遣ったか分からないほど、彼と身体を重ねました。 僕以上に僕の身体を知る佐伯さんの手や口であらゆる場所を愛撫され、後ろを解され、言葉にするのが恥ずかしい格好をさせられ、そして彼は僕の最奥まで入り込んできました。骨の髄、脳髄からぐずぐずに熟れ、ぼろぼろと崩れていきそうなほどの熱や快楽を与えられ、僕は半ば狂ったようによがり、同時に佐伯さんにも悦んでもらいたくて、懸命に腰を揺すったり……その、色んなことをしました。 佐伯さんとの情事の際、決まって僕が先にへばってしまいます。ぜぇはぁ、と肩で息をしながら蒲団に伏せている僕を見た佐伯さんに、にやにやと笑われるのが常です。時にはほとんど気を失うように眠ってしまい、翌朝、綺麗な身体に寝間着を着た状態で目が覚め、顔を青くすることもあります。そんな時は佐伯さんに手間とご迷惑をかけたことを謝りながらも、羞恥で頭が茹だりそうになります。 佐伯さんに拾われ早十五年、交わるようになって十一年。数日前にようやく、「できれば、もう少し手加減して頂きたいのですが……」とぼそぼそとお願いしたところ、「それは無理な相談だな」と即刻却下されてしまいました。 「これまで、俺は俺なりにお前を愛してきたつもりだったが、いまいち伝わってなかったからな。改めて全力で伝えるために、手加減なんてできるわけがないだろ」 真面目な顔で腕を組み、うんうんと頭を縦に振りながらそう言われてしまうと、こちらとしては赤面し閉口するしかありませんでした。 ……すごく、すごく嬉しいのですが、自分の身が保つのか心配でなりません。体力をつけるべく、朝昼晩の食事の量を増やし、腕立て伏せや腹筋を日課にしようと決心しましたが、二日目である今日、早くも挫けそうになっていました。

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