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第7話※グラン視点

初めてあったその日、天使に出会った。 彼の名はアルト・シグナム…悪逆無道と恐れられている悪魔の血を引いた天使。 愛らしいくりくりの瞳に黒いさらさらの髪、においもお花の良いにおいで体に顔を埋めてスーハーにおいを堪能する。 あんな悪事に手を染めまくっていたシグナム公爵からこんな可愛い子が生まれるとは思わなかった。 もしかしたら血が繋がってないのかと疑ってしまう。 その疑いもある意味間違いではないかもとアルト様の世話係になりすぐに思った。 アルト様に一度も顔を見せに来ない両親、忙しいのかと思ったが姉のヴィクトリアはとても可愛がっている。 そこで彼の笑顔を守るのは自分だけだと、そしていつか悪魔の家から彼を連れ出し一緒に暮らすんだ! シグナム公爵にはZランクの自分にいろいろと教えてもらった恩があるが、それはそれこれはこれだ。 アルト様の周りに誰も寄り付かないように大切に大切に育ててきたんだ。 だからアルト様の好物や好きなもの、将来の夢など全て把握していた。 しかし、アルト様デビューのあの社交場でまさかアルト様をたぶらかす男が現れるなんて思わなかった。 無知なアルト様はすぐに狼に食べられてしまう! アルト様が早くあの男を忘れるように花は内緒で処分した。 お友達?そんなのこのグラン・クアトロがなってあげます。 友達恋人家族なんでもなれるからもう寂しくありませんよ。 アルト様の笑顔は独り占めの筈だった。 隣でアルト様が寝息を立てている。 まさかこんなに早くアルト様と離れ離れになるなんて思いもしなかった。 当然嫌だと言った、アルト様の世話係はどうするのかと… シグナム公爵はこれを断るとこの家から追い出し二度とアルト様と会わせないと言った。 アルト様は後一年したら一般学校に入学するからもう世話係はいらないとそう言った。 一年はあの小さな方をほったらかしにするのかと拳を握り唇を噛んだ。 今逆らうと二度とアルト様に会えない、ヴィクトリア様の傍に居ればシグナム家と繋がれる…いつかアルト様と会える。 頷くしかなかった。 頬に触れると柔らかい感触がした。 いつもアルト様の寝顔を見るとつい頬に触れたくなる。 しかもいつもより距離が近くてドキドキする。 淡白に見られがちだが自分だって男だ、別に小さな男の子に興味はないがアルト様だとしたら思うとつい元気に… 「き、キスだけだったら…いいよね」 誰に許可を取ってるのか分からないが、アルト様のファーストキスぐらい自分がほしい。 顔も名も知らない奴に取られるくらいならビンタされても自分が… 唇に柔らかい感触がした。 すぐに離れて顔がゆでダコのように真っ赤になった。 きっきききキスをしてしまった!!天にも昇る嬉しさだがベッドで暴れるとさすがにアルト様が起きてしまうから自重する。 なんか唇が魔力を感じたようにピリリと痛みが走ったがアルト様は魔力がないからきっと気のせいだろう。 気付かず幸せな気分で寝ているアルト様を眺めて今なら良い夢を見られるかもしれないとアルト様の横で瞳を閉じた。 「グラン、グーラーン」 「あ、アルト様?」 アルト様が優しく体を揺すり起こしてきた。 ほんの少し前まで言葉も喋れない赤子だったのにこんなに大きくなられて… ってあれ?なんかいつもの可愛い上目遣いの目線じゃない? 歳はそう変わらないほど大人びていてくりくりの瞳は若干幼さが残っているがキリッと男らしくて… どんなアルト様でも可愛いし、愛せる自信がある! 大人なアルト様にドキドキ… そうか、年少期のお姿は過去の記憶だったのか。 今現在の二人は起こし合う間柄なんだな。 アルト様を見つめて微笑む。 「グラン、俺…結婚するんだ」 「……へ?」 笑顔が一気に固まる。 いったい何故どうしてそうなった。 なにか言わなきゃいけないのに言葉が出ない。 戸惑っていたらアルト様に影が掛かり誰かがアルト様を抱きしめた。 ソイツは金髪ウルフヘアーに耳にピアスが沢山ついていていかにも遊んでそうな男だった。 最悪だ、なんでよりにもよってソイツなんだ! 「グラン、俺…この人と結婚するんだ」 「グランお父さん、息子さんを俺に下さい」 「いいわけあるかぁぁ!!!二度とアルト様に近付くなけだものが!!」 半笑いでこちらを見る男に近くにあったものを投げつけようとした。 そこでハッと目を覚ました。 手には投げつけようとした枕が握られていた。 顔を埋めるとアルト様のにおいがして少し安らいだ。 まさか久しく会っていない昔の知り合いを最悪な形で思い出すとは思わなかった。 あのけだものがアルト様に近付いたりなんかしたらと思うとおぞましい!…アルト様が妊娠してしまう! 男だからないとは思いたいが、アイツ変な薬の研究してるからあり得なくはない。 一気に鳥肌が立ち目線でアルト様を探す。 そしてアルト様を見つけ安堵するが、この時は知らなかった。 後に悪夢ワードである「結婚」と本人の口から聞くまでは…

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