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第104話

とりあえずシグナム家の懐には入れたから一歩前進だ。 まだ油断は出来ない、問題はこれからだ。 両親はすぐに全て信用していないらしく、作戦当日になったら俺を呼ぶ…力を使う準備をしとけと言われた。 仕方ない、なら…両親に信用されている人物に聞けばいい。 俺は両親に頭を下げて、部屋を出ようとして足を止めた。 そうだ、両親が素直に答えるかは分からないが…聞いてみて損はないだろう。 「姉さんは?…何処にも見当たらないけど」 「ヴィクトリア?あら、貴方達仲がよろしかったかしら?」 「…い、一応姉さんも作戦に関わるんでしょ?だから……」 「あの子は貴方と同じ、いえ…ゼロの魔法使いのような力はないからそれ以下かしら……あの子は作戦決行日まで待機よ、勿論あの子に聞いても何も知らないわ」 「…そう、ですか」 何となく分かっていた、けど…確信が欲しかった。 姉はきっとあの時のようにトーマの味方をして両親に切り捨てられた。 でも作戦に参加しているなんて思わなかった。 ……捨て駒にするつもりなのか。 だとしたら姉を助けなきゃ、姉の本心を知ってる今…強くそう思った。 頭を下げて今度こそ部屋を出た。 姉の部屋は何処だろうか、うろうろしてたら怪しまれるよな。 会議室を出ると先ほど下がっていったメイドが待っていた。 「お部屋へご案内いたします」 「い、いえ…俺は一人で…」 「シグナム様から目を離すなとのご命令なのでご理解下さい」 しまったな…ここまでは想定外だ。 拘束されなくても自由がない。 何処かで撒くことは出来ないだろうか。 トイレに行きたいと言うと何故か男子トイレにまで入ってこようとしていたから慌てて出た。 無表情で「よろしいのですか?」とか聞いてくるから怯えた顔で必死に頭を縦に振った。 どうしよう、この人…何処でも着いてくるつもりだ…さすが父の命令には逆らわないシグナム家の使用人だ。 部屋って騎士さんと過ごしたあの部屋ではないんだろうな…俺が死ぬ前にいた…あそこだろう。 部屋に入ったらきっと部屋から出れなくなる。 どうしようと必死に考える。 「……おい」 「なんでございましょう」 「アルト・シグナムは俺が預かる、シグナム家当主の命令はそうだった筈だ」 「しかし貴方のご命令はヴィクトリア様の護衛であった筈ですが?」 考え事をしていたら誰かにぶつかった。 そこで交わされた言葉、俺はこの声をよく知っている。 ふと上目遣いで見上げると切れ長の瞳と目があった。 感情が読めないその顔はお互い様だった。 彼も俺が読めないのだろう。 服の襟を掴んだかと思ったら俺を後ろに放り込んだ。 乱暴な手つきで頭を打ってしまい、ヒリヒリした顔を押さえる。 「女には女の護衛の方がいいだろう」 「……ですが」 「ゼロの魔法使いについて、あまりにも無知なんだな」 そう冷たく発した騎士さんはメイドに近付き肩に手を添えた。 囁くように耳元で何かを口にするとメイドの顔色がみるみると悪くなっていく。 俺の顔を一瞬見たかと思うと頭を下げて俺と騎士さんを通り抜けて早足で去っていった。 騎士さんは何を言ったのだろうか。 無言で歩き出す騎士さんの後を着いていく。 足を止めたのは慣れ親しんだあの部屋だった。 「…あの、騎士さ」 「早く入れ」 眉を寄せて睨まれ慌てて部屋の中に入った。 あの時のまま手付かずで残っていて嬉しかった。 騎士さんはドアに寄りかかり口を閉ざしてしまった。 助けてくれた…?いや、騎士さんが無条件で助けてくれたとは考えにくい。 他に理由があるのかもしれない。 理由がなんであれ、騎士さんの力が今の俺には必要だった…今の段階で使用人以外で信用されているのはこの人だけだ。 とりあえずいきなりだと警戒されるから世間話からどんどん警戒を解こう。 「さっき、メイドの人になんて言ったんですか?」 「………」 無視か、確かにフレンドリーな人ではないからな。 でもここで諦めたらおしまいだ、次だ。 あれから一時間くらい質問責めをして騎士さんが口を開く事はなかった。 天気の話題から食べ物など騎士さんが興味がある話題が分からず思いつくかぎり話したが全然見向きもしてもらえなかった。 同じアルトだから趣味が合うと浅はかな考えだったんだなと思い知らされた。 次、は…やっぱり騎士さんの食いつきはこれしかないだろう…警戒されたくないからあまり話したくはなかったが、時間がないんだ。 それに協力してもらうにはいずれ話す必要がある話題だった。 「騎士さん、トーマの事なんだけど」 すると今まで目を閉じて俯きドアに寄りかかっていた騎士さんが反応を示した。 よかった、ちょっと寝てるかと思って心配だった。

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