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「おそ。なにやってたわけ」
柊一に捕まっていたせいで、残り時間もわずかとなった昼休み。
屋上でタバコをくわえた糸井が、ネオンの姿を捉えるや否や不機嫌にぽつりと漏らした。
「すいません、ちょっと、ゴタゴタして。あ、糸井くんたちに頼まれてたパン、購買に全然なくて。あの、フルーツサンドとか、嫌いですか?」
いちごと生クリームがたっぷり詰まったサンドイッチを、紙袋から取り出す。
「舐めてんのか」
眉のない糸井の眉間に、ぴくりとしわが寄った。
顔立ちが綺麗な人間は怒ると迫力がある。
糸井は柊一とはまた違ったタイプの美人だった。
「そんなんじゃ、なくて。あの、フルーツサンド、いちごと、みかんとがありまっふぐうっ」
全てを言い切る前に、背中に酷い痛みが走る。
バランスを取れず、前のめりに倒れ込めば、せっかく買ってきたフルーツサンドを自分の腹で押し潰す形になった。
「ひ、たい…あの、ご、ごめ、んなさい」
「アホか」
糸井があごをしゃくると、後ろにいた「自称糸井くんのトモダチ」たちが、ネオンの背中を踏み付けた。
どうにか立ち上がろうにも、のしかかる重圧に負けて立ち上がれない。
もがくたびに腹の下で飛び出た生クリームが、シャツにぬるぬるとこびりついた。
「ネオンちゃん、誠心誠意ごめんなさいする気ある?」
糸井が目の前にしゃがみ込んだ。
太陽の光が色素の薄い、プラチナ色の髪に反射して、キラキラと眩しく光っている。
切れ長の目に、高い鼻、薄い唇。
どこか中性的な糸井は、意味有りげに下唇をぬっとりと舐めた。
「オレの、知り合いがさ。救いようない変態で、ペドフィリアっての?まあ、いわゆるガキにおっ勃たてるようなキチガイなわけ」
「え、どーゆう、意味」
「ガキのちんこの写メ、買い取ってくれるっつーんだけど、おまえちょうどいいから脱いでちんこ見せろ」
糸井の言葉をネオンはなかなか理解できなかった。
しばらくの沈黙の後、ネオンは慌てて首を振る。
「え、ちん、え、や、やです」
「や、とかないのー。鷲尾 、ちょっと脱がせて」
必死に暴れるも、抵抗虚しく、意図も容易く鷲尾に制服のズボンを下ろされる。
ヒョウ柄のボクサーパンツは、だせえ、だせえと笑われたのちに、無残にも引ったくられ、あろうことか丸めて柵の外に放り投げられた。
「やです、やめ、鷲尾、さん、やだ」
無理やり開かされた両足。
糸井のスマホが向けられる。
「ネオンちゃん、つるっつるの皮被りじゃん。たぶんアイツも、大喜びするだろーよ」
カメラのシャッター音が、無慈悲に響き渡った。
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