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6-親ぎつねホロ酔いコンコン意地悪お兄さんギョギョギョ!

その日、夜に開かれる納涼花火大会を控えた村では夕方頃からお祭りが始まって、ぴーひゃらどんどん、ご陽気な祭囃子、どこもかしこもぱっと華やいで大賑わいでした。 そんな中で一際目を引く者がおりました。 「お前様、ご覧になって? なんて愛らしい金魚達でしょう」 雪色の長い髪を一つに束ね上げ、涼しげな白地に黒蝶がひらひら舞う浴衣、カランコロンと下駄を鳴らすのは。 この世のものとは思えぬような別嬪娘。 金魚すくいの前にしゃがんで見惚れる様は、そりゃあもう、金魚よりも愛らしいったらありゃあしません。 隣に夫がしゃがみ込めばクスクスと顔を綻ばせ、灯篭のふんわりした明かりに無駄に可憐に色気を振り撒きます。 まぁ、可憐な別嬪娘、その正体は妖怪の血を引く妖狐一族の末裔、しかもバリバリ現役の雄ですが。 隣にしゃがんだ意地悪お兄さんは表向き夫となっていますが、ほんとのところコチラが嫁役。 バリバリ現役のあやかし(ここの)に夜な夜な尻を貪られているのです。 よくもまぁ、こうも化けれるもんだな、九の奴。 昨夜は遅くまでさんっざん俺の尻を……のくせして、今じゃあ澄まして別嬪女房気取り、よくやるよ。 「金魚すくい、してぇのかよ?」 意地悪お兄さんが問いかければ別嬪九は首を左右に振り、余った髪をさらりと滴らせ、愛しい仮夫を上目遣いに見上げてきました。 「こんなに華奢で愛らしいお魚さん、ふふ、すぐに壊れてしまいそう」 団扇で口元を覆って涼しげに笑う九に周りの男どもは鼻の下を伸ばし放題。 「愛らしくねぇ俺は壊れにくいからどんなに手酷く扱っても平気だって、そう言いてぇのか?」 仮初の別嬪姿に慣れてきた意地悪お兄さんは面白くなさそうに肩を竦めてみせるのでした。

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