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花火が打ち上げられるまでのんびりお祭りを巡る予定にしていた二人ですが。
「よぉ、そこの化け狐さん」
「おっと、間違えた、人間男に嫁いだ好きモンの好色狐さん」
「違ぇよ、男色狐だろ」
いや~な輩に絡まれました。
酒屋前の卓で酒を飲み交わしていた、狸のお面をつけて口元だけ露にした若者三人がニヤニヤしながら呼び止めてきたのです。
彼等も人間じゃあございません、化け狸一族の末裔たちです。
正体を知っている意地悪お兄さんはぎょっとし、別嬪九は冷え切った眼差しでいけ好かない彼らを見返します。
「せっかくの祭だ、飲み比べ、しねぇかい」
「下らない、行きましょう、お前様?」
去ろうとした別嬪九を狸らは一斉に嘲笑します。
「勧めた酒を断るたぁ、無粋な古狐よ」
「よほど自信がねぇみたいだな」
「狐の千鳥足、見物だったんだけどなぁ」
くるりと振り返った九。
艶やかな紅の唇を妖しげに歪ませて仇なる狸をじろぉり見下ろします。
「狸の千鳥足、お前様、とくとご覧になってあそばせ?」
それからが大変でした。
狐と狸の飲み比べ、人にあらず、あやかしですから、それはそれは飲む、飲む、飲む、飲む。
若者三人相手に一切引けを取らない別嬪娘に興味引かれて集まり出す村人達。
屋台の亭主まで店を空けて見物に来るほどです。
「参ったな、九の奴、大丈夫かよ……?」
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