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「あ、どーもはじめまして、だな、えーと、その、俺はだな」
「僕のお嫁さんだよ」
「あ、そーそー、コイツの嫁……」
言っていて今更ながら恥ずかしくなってきた意地悪お兄さん。
男で嫁だなんていう奇天烈な肩書きを他者に説明するのが急に馬鹿馬鹿しくなりました。
「だ、そーだ、ハイ」
正座もさぼって畳の上で胡坐を組んだ不躾極まりない意地悪お兄さん。
緋目乃は決してバクリすることも禍を起こすこともありませんでした。
ただし。
「これまでにない頑丈そうな人間。かつてのお前の伴侶、島国一の美しさと謳われた夜叉小町とは似ても似つかぬ。見事なまでの趣旨変えで、妖狐の末裔、九?」
さっきから意地悪お兄さんの巫女姿にデレている九の耳には入っていないようですが。
「夜叉小町に限らず。一夜限りとして選んだ相手みな、真珠の如き艶めきを持した柔肌に玲瓏たる美声、それはそれは贅沢な夜伽に相応しき、物言う花の数々だったというのに」
何やら小難しい言い回しでありましたが、意地悪お兄さんの狐耳には、そらもうダイレクトに流れ込んできました。
「度重なるオイタに花を毟るのも飽きて、次は雑な草が美味となり申したか」
詰襟にインバネスを羽織った緋目乃はむっつり押し黙っている意地悪お兄さんに可憐な笑みを深めます。
「何はともあれ。どうぞお幸せに?」
「……はあ」
「ああ、そうそう。あのザル罠はなかなかどうして良い居心地でした」
「は?」
むっつりしながらも首を傾げた意地悪お兄さんに、緋目乃は、それは満足そうに声を立てて無邪気に笑うのでした。
お披露目を済ませて藁葺き屋根のおうちに戻ってきた二人。
「なかなかな遊び人だったみてぇだなぁ、この助平狐」
不機嫌丸出しな意地悪お兄さんの言葉に九は微笑みます。
「やいてるの?」
「あんな茶番なんざに付き合わせやがって」
「ごめんね。此方側にも形式っていうものがあって」
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