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最終章-20-意地悪お兄さんと親ぎつね!!一家でコンコン!!純真無垢な灰色ぎつねは総愛され!!
雪やこんこ、狐やコンコン。
雪化粧したお山に映えるは南天の赤い赤い実。
枯れ木の間に冬毛のふさふさ尻尾が過ぎります。
「キューーー……」
でも獣じゃあ、ありません。
「つめた……」
ぱっと見は人の子です。
でも人じゃあ、ありません。
何せ尻尾がついています。
そして頭には灰色の狐耳が。
「はーーー……」
作務衣姿で裸足、凍えた雪山で寒そうな格好をして、赤くなった両手に息を吹きかけます。
厚い雲に閉ざされてうすら暗い空。
しんしんと降る雪の中、ひとりで跳ねて回って遊ぶ、まだまだ小さそうなこども。
サクサクと音の鳴る真白な絨毯に寝転がり、作務衣の間からお股へとお目見えしている自分の尻尾にじゃれつくのに夢中になります。
「キューーー!」
そんなこどもの鳴き声に招かれたのか。
「ーーそんな格好でいたら風邪を引いてしまうよ」
すぐそばへ音もなく舞い降りた彼にこどもはびっくり、尻尾をさらに膨らませて飛び上がりました。
一方、火鉢を入れ込んだ炬燵でぐうたら丸くなるのは。
「やっぱ冬は炬燵に熱燗だよな~」
意地悪お兄さんです。
「きゅるる、そのお酒はお前のじゃないでしゅ、とっとと自分のおうち帰れでしゅ」
しかも余所様のおうちでべらぼうに寛いでいます。
相も変わらずな体たらくぶりで……す……?
「ちぇっ、けちくされ」
お下品な言動はともかく、常にぴょっこんしていた狐耳が見当たりません。
それに灰色だった髪はまっくろくろ、白髪染めでも使用したのでしょうか?
まるであやかし狐の九と出会う前の意地悪お兄さんに戻ったかのようです。
「蜜柑を食べたらいい」
幼女風男子の成りをした九九にあっかんべーされてプンスコしていた意地悪お兄さんに向かい側から蜜柑を差し出したのは。
「九九が山から取ってきてくれたんだ。飛び切り甘くておいしいよ」
優男お兄さん……もとい、優男イケ爺さんです。
「食ってやってもいいけどよ、皮剥いてくれ」
優男イケ爺さんに意地悪お兄さんが駄々をこねれば、九九は懐から巨大ハリセンをにゅっ、手加減なしに真っ黒頭をシバキました。
「いでぇッ」
「手土産もなしに人様のおうちに長居するなでしゅ、ブス狐」
「お前なぁッ、いい加減その呼び方やーめーろ!!」
「きゅー!」
両手グーで頭をグリグリされて鳴く九九、騒がしい光景に優男イケ爺さんはゆっくり笑います。
『魚ぁ? 肉のほうがいーんだけどよ、ま、しゃあねーか』
『きゅるきゅる』
『うわー! 殺されるー!』
『ギシャァァァァァァァア!!!!』
意地悪お兄さんが化けもん狐の九にブチ犯され……運命の出会いを果たしてから、彼是、五十年ほどの年月が過ぎようとしていました。
「お前、いつの間にやらシワがどっと増えたよな」
「だんな様は古稀を迎えたでしゅ」
「じゃあ俺も七十ってことかよ。やっぱりたまにはコッチに下りてこねぇと自分の年齢忘れちまうな」
五十年前と外見が変わらない意地悪お兄さん、深い皺が刻まれた旧友の優男イケ爺さんをまじまじと眺め、舌打ちをひとつ。
「ちぇっ。シワだらけで年食ってるくせに相も変わらず優男ときてやがる」
「違うでしゅ。前よりも優しくて二枚目でセクシーでしゅ」
張り切って褒めちぎった九九はくるんと一回転して子ぎつねの姿に。
炬燵に入っている優男イケ爺さんのお膝の上でまぁるくなりました。
「九九、テメェ猫かよ」
「にゃあにゃあ」
「カマトトぶりっこ狐がにゃあにゃあ鳴いて猫かぶってやがる」
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