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第1話 暗黙の了解。

ガタガタっと窓が揺れる音がして目が覚めた。 ナイトスタンドに手を伸ばし、明かりを点けて時計を見た。 「夜中の1時か。。。」 窓の方に目を向けると大粒の雨が降っていた。 尊(たける)はベッドから起き上がり窓の前に立ち、暫く外を眺めていた。 風は更に強く吹き雨は勢いを増し土砂降りになった。 あれから2年になるのか。。。 尊は、優多(うた)と2人でこの家に暮らし始めた頃を思い出していた。 最初の数週間は大変だった。 優多は殆ど口を利かず、部屋から余り出て来なかった。 家の事は全て俺がやった。 掃除や洗濯は難なくこなしたが、問題は料理だった。 この家に来る迄は自炊などしたことが無かったから、最初の頃は人が作った料理とは思えない程酷い出来栄えだった。 優多は食事の度に「硬い。。辛い。。苦い。。」等 、辛辣な言葉を口にした。 しかし、彼は文句を言いながらも俺が作った料理を残す事は決してしなかった。 俺は優多に喜んでもらいたくて実家の家政婦さんから料理を習い一生懸命取り組んだ。 1ヶ月が過ぎた頃。 優多が俺の料理を口にして初めて 「美味しい!」と言って微笑んでくれた。 その可愛い笑顔を久しぶりに見た俺は、嬉しさの余り思わず優多を抱きしめて彼の頬にそっとキスをした。 優多は顔を真っ赤にして 「止めろよ!」 と言ったが、俺は暫くの間彼を抱きしめ離さなかった。 それから、彼は少しずつ笑顔を見せる様になり、部屋に引きこもる事も少なくなって以前の明るさを取り戻していった。 過去の思い出に浸っていた時、コンコンッとドアをノックする音がした。 ドアを開けると枕を抱きしめた優多がそこに立っていた。 「眠れないのか?一緒に寝るか?」 優多に尋ねると 彼は返事をする代わりに頷き部屋に入って来た。 あの日からだ。。。 雨が降ると優多は不安げな表情を浮かべ俺の傍に来る。 俺は何も聞かず只彼を抱き締めて一緒に眠る。 この習慣は一緒に暮らし始めてから2人の暗黙の了解となっていた。。

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