15 / 55

第14話 相手は誰だ?

優多は制服の上着とシャツを脱ぎ、私服をバッグの中から取り出そうとした。 突然ドアがパッと開き、樹季が部屋に入って来た。 「お〜い。飯出来たぞ!あれ?お前まだ荷物の整理し終えていないのか?」 「あぁ。着替えて整理したら直ぐに行くよ。」 「手伝いが必要だったら言えよ。」 「うん。大丈夫だよ。ありがとう。」 樹季が部屋から出ようとしたその時、上半身裸の優多の後姿に目を留めた。 そして彼の後頸部(うなじ)にキスマークがくっきりと付いている事に気が付いた。 「優多、お前うなじのそれ。。。」 「え…?何?」 優多は不思議そうな表情を浮かべて首を傾げる。 「いや。。何でもない。」 樹季はその事に触れず、黙って部屋を後にした。 あれは優多の相手である誰かが、優多は自分の人だと、彼の周囲の人々に知らしめる為に付けた印なのは明白だった。 優多は多分気付いていない。。 そいつは優多が気付いて隠してしまわない様、故意に彼の見えないところに印を残したんだな。。 優多の相手が誰かは知らないが、優多にかなり惚れ込んでるな。 しかも頭が切れてかなり独占欲が強いタイプの様だ。 優多も厄介な相手に惚れられたもんだな。。。 樹季と優多は食卓に着き、食事を取り始めた。 尊の料理の腕前程では無いが、樹季が作ってくれた料理は優多の好みの品ばかりで、箸が進んだ。 樹季は自分が作った料理を美味しそうに口に運ぶ優多を眺めながらも、彼にキスマークを付けた相手の事が気になり、知りたくてウズウズしていた。 樹希は、優多にさり気無く尋ねてみる事にした。 「優多。最近どうだ?変わりないか?学校は楽しいか?」 「うん。特に変わった事は無いよ。」 「そうか。なら良かったな。」 俺は馬鹿か? これじゃ、まるで息子に友達が出来たか心配して尋ねてる母親みたいじゃないか! 樹季は自分で自分の演技の下手さに毒付いた。 コホンッと咳払いをし、 「お前も、そろそろ恋人とか出来る歳だろ?好きな人とか恋人は居ないのか?」 これだよ! この聞き方なら優多も答えやすい筈だ! 樹季はほくそ笑みながら、心の中で呟いた。

ともだちにシェアしよう!