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第20話 言葉にならない叫び。

女性の左手は優多の服を掴んだまま、右手を自分の首元に持って行くと下げていたネックレスを引きちぎり優多の手の平に置いた。 ネックレスには指輪が通してあり、彼女は優多の手を包み込む様にして強く握らせた。 口元が僅かに開き 「息子に、い、る渡し、、あ、愛してるとつ、つ、たえて、、」 そう言い終えると彼女の手から全身から力が抜け、遂には動かなくなった。 そして、彼女が再び口を開く事はもう無かった。。 なに。。? 何が起こってるんだ? これは夢かな。。。? 樹季は携帯電話を手にし、電話を掛け始めた。 通話の相手はデパートから一番近くに在る、元宮総合病院の系列病院の院長だった。 「はい。少し前に救急車を呼びました。父に…元宮総合病院の院長に、大型トラックがデパートに突っ込んできて現時点で少なくとも20名前後の死傷者が出ていると連絡しておいて下さい。父の病院の医療スタッフが其方に行く筈です。近隣の病院にもお願いします。」 「はい。。それとその中に嘉神雛多と母親も居ると、そう伝えて頂ければ分かると思います。救急車が到着したら僕も一緒にそちらに行きます。はい。では。」 「優多!」 尊は大声で優多の名前を呼び、倒れている女性の前で動けないままでいる彼の手を引き、トラックの前まで連れて来た。 其処には、自分が良く知っている2人が、重なる様にして倒れていた。 母親の服は真っ赤に染まり雛多を庇うようにして彼の身体に覆い被さっていた。 後頭部が陥没しており、床に血溜まりが有った。 彼女が既に息絶え、遠くに去って行ってしまった事は明らかだった。。 優多は全身に震えを感じながらも、母親と兄の元へ歩み寄って行き、絞り出す様な声で尊と樹季に問い掛けた。 「ねえ。。違うよね? 良く似ているだけだよね?」 「。。。優多。」 「違うって言えよ!!!」 優多はその後言葉にならない悲痛な叫び声を上げ、意識を失いその場に倒れ込んだ。 尊は優多の元へ駆け寄り、彼をきつく抱き締めた。 その声に反応したかの様に、雛多の指先が微かに動いたのを樹季は見逃さなかった。 「おいっ!尊!雛多が生きてるぞ!!」 樹季の言葉に尊が反応するのとほぼ同時に、到着した救急車から隊員がストレッチャーを運んでこちらに向かって来た。 樹季は手を挙げ隊員と共に2人を救急車に乗せ、尊は優多を抱き上げ病院へと向かった。。

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