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第24話 最期の時間。

優多の母親と兄雛多が亡くなり、翌日に通夜が、翌々日に葬儀が執り行われた。 その日は、2日前の大雨がまるで嘘だったかの様に、雲一つなく青く澄み切った空模様だった。 優多の父親は仕事で海外に居り親類も遠方に住んでいた為、彼が帰国するまでの間、尊と樹季の両親等が喪主の代理として葬儀を執り仕切った。 大勢の人が葬儀に参列し、葬儀場は2人を偲び別れを惜しむ人々の咽び泣く声と悲しみに包まれていた。 優多は雛多が息を引き取ってから間なし倒れた。 極度のストレスと疲労により憔悴しきりだったが、母親と兄雛多を見送る為、尊と優多に支えられながら、ひたすらに耐え続けた。 葬儀が終わりを告げようとした時、優多の父、嶺多(りょうた)が葬儀場に姿を現した。 嶺多は優多を見つけると、彼の元に駆け寄り強く抱きしめた。 「優多。独りにしてすまなかった。。」 「お父さん。2人に会ってあげて。。」 「ああ。。そうだな。一緒に見送ってあげよう。」 父と息子は、溢れ出る涙を抑える事なく、肩を寄せ合い、支え合いながら、2人の元へと歩いて行った。 嶺多は半年振りに家族団欒で過ごす事を心待ちにしていたが、皮肉にもこれが妻と長男と過ごす最期の時間となってしまった。。 嶺多は、自分に代わって葬儀を執り行ってくれた尊と樹希の両親に感謝の意を述べ、葬儀に参列し最後まで残ってくれていた弔問客等と挨拶を交わした。 その後、彼は尊と樹季の前まで来ると、2人に向かって深々とお辞儀をした。 常に威風堂々していた嶺多の姿は影を潜め、憔悴し、沈痛な面持ちが見て取れた。 「私が留守の間、優多を支えてくれて心から感謝しているよ。君達が傍に居てくれなかったら、息子は独りで耐えられなかっただろう。」 嶺多の感謝の言葉を聞き、樹季が先に口を開いた。 「俺達は特別な事は何もしていません。自分達で出来る事をさせてもらっただけです。」 尊も頷きながら嶺多に言った。 「僕等も優多に支えてもらっているんです。彼が傍に居てくれなかったら、きっと耐えられなかったでしょう。」 嶺多は、彼等の思いやりに溢れた言葉を耳にし、深い感銘を受けた。 彼は又涙がこみ上げて来て、それ以上何も言葉が出てこず、尊と樹季にもう一度深く頭を下げた。 程なくして、嶺多は皆に一礼すると、火葬場に向かう為車に乗り込んだ。 優多は既に車内で眠っていた。 父親に会えて気が緩んだのだろう。

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