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第23話 約束。

彼は母親について一言も尋ねては来なかった。 彼女が既に遠くに逝ってしまった事を感じていたのだろう。。 樹季は、嗚咽を堪える事が出来ず、黙ったまま何度も頷いた。 尊は雛多の目を真っ直ぐに見つめ返すと、自分自身にも誓いを立てるかの様に想いを口にした。 「雛多。お前に約束する。俺は、、俺達は、優多を決して独りにはしない。兄貴としてアイツが笑顔でいられる様、支えていくよ。」 「うん。ありがとう。。」 雛多は尊の言葉を聞いて、嬉しそうな表情を浮かべた。 雛多は優多の方に少し顔をずらして手招きをした。 「優多。こっちにおいで。」 優多は雛多に震えているのを気取られない様、身体に力を入れると、彼の傍に行き手を握った。 雛多の声は、先程より更にか細そくなっていた。 「優多。ごめんな。俺とお母さんは一緒に遊びに行けそうにないんだ。その代わりに、黒とグレーのグラデーションカラーのマフラーもお前にやるよ。」 「要らない!俺には青と水色のマフラーがあるだろ。早く治して4人で行こうよ。」 「。。。そうだな。 行けたら良いな。」 互いに、それがもう叶う事がないと分かっていた。 「優多。お父さんは仕事が忙しくて、余りお前の傍には居られないかもしれないけど、お前をとても愛してるよ。だから理解してやってくれ。これからは、尊と樹季がお前の兄貴だ。何かあったら。。2人に。。相談しろ。」 雛多の声が消え入りそうな程になっていた。 「優。。多。いつも笑顔で。。」 「うん!うん!分かったよ!」 優多は精一杯の笑顔を雛多に向けた。 雛多は優多の笑顔を見て、ゆっくりと目を閉じた。。 心電図のフラット音が「ピーーーーッ」と鳴り、雛多も母親と同様に、彼等の元から去って逝ってしまった事を告げた。 「雛兄!俺を独りにしないでーー!!」 「雛多!逝っちゃ駄目だ!!」 「雛多!雛多ーー!!」 3人は、その場に崩れ落ち、泣き叫んだ。 彼等は雛多の名前を何度も何度も呼んだ。 だが、雛多の耳に、彼等の悲痛な叫びが届く事はもう無かった。。 雛多は顔は、まるで眠っているかの様な、 とても安らかなものだった。。 土砂降りの雨はいつの間にか小雨へと変わっていた。。

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