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第26話 瀧・元宮家訪問。

葬儀の日から、既に3日が経過していた。 おじさんが出国する日は1週間後だぞ。。 樹季も本音を言えば優多を引き留めたいと思ってはいたが、尊から電話が来るのを待っていたのだ。 だが、彼は未だに何の連絡も寄越して来なかった。 尊は、優多をこのまま行かせるつもりなのか。。? 樹季は悩んだ末に、携帯電話を手に取り、壬生家に電話を掛けた。 相手が受話器を取り、電話の向こうから聞き慣れた声がした。 「もしもし。壬生でございます。」 「もしもし。瀧さん?お久しぶりです。樹季です。」 瀧は、尊の父親が幼少の頃から壬生家に仕えている執事で、忙しく留守がちだった両親に代わり、4人を気に掛け、遊び相手になってくれた人だ。 樹季は彼を信頼している。 「樹季さん。ご無沙汰しております。今、尊坊ちゃんは、お出掛けになられてます。急用でしたら、携帯電話にお掛けになった方が宜しいかと存じます。」 「いえ。今日は瀧さんに教えて欲しい事があって電話させてもらいました。」 「。。。私にですか?」 電話の向こうから、困惑した様子が伺えたが、瀧は直ぐにいつもの彼に戻り、 「かしこまりました。電話では話しづらい事かと思われますので、私が今から樹季さんのお宅に伺っても宜しいですか?」 「はい。お待ちしています。」 「では、後程。」 樹季が何を知りたいのか、瀧には既に分かっているようだった。 流石だな。。 30分もしない内に玄関の呼び鈴を鳴らす音が聞こえ、樹季は自ら扉を開け瀧を出迎えた。 瀧は扉を開けた相手を見てそれが樹季だと分かると、彼に向かって直ぐにお辞儀をした。 元来、名家や旧財閥等、地位が高い親の元で育った子息・令嬢は、親の権力を傘にきて歳上の人間に対しても尊大な振る舞いをする人間が少なくない。 だが、彼等4人は違っていた。 両親の育て方が影響している事は勿論だが、彼等自身の人となりなのだろう。 自分を客人として迎え入れてくれる樹季の謙虚な姿勢に、瀧は感心することしきりだった。。

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