28 / 55
第27話 全貌。
「瀧さん。突然お呼び立てしてすみません。」
「いえ。私も樹季さんとお話させて頂きたかったので。」
「どうぞ。お入り下さい。」
樹季の家にも当然執事や家政婦が居たが、
樹季は「自分の客人だから」と彼等に告げると、自ら瀧を部屋へと案内し、珈琲と菓子を出した。
瀧は「失礼致します。」と樹季に言葉を掛けてからソファーに腰を下ろした。
樹季もソファーに向かい合って座り、瀧に尊について尋ねようと口を開き掛けた。
すると瀧が下げていた鞄からいくつかの書類を出し、
「尊坊ちゃんが、この3日間の内に用意された物を書類にまとめました。ご覧下さい。」
そう言って樹季に手渡した。
樹季は、直ぐに書類に目を通した。
瀧が持参した書類には、庭付きの一軒家を購入した事が記載されており、住所を見ると樹季と尊が通う学校に程近い場所だった。
それに加えて、生活する為に必要な家具家電製品一式、ベッド、ソファー、テーブル、椅子等、それら全て2人で暮らすには充分な物を買い揃えていた。
次の書類を見ると転校、転入の手続きに関する参考書類で、転入先は尊と樹希が通っている学校だった。
しかも小学部の。。。
「瀧さん。。これ。。壬生のおじさんは知ってるの?」
「いいえ。まだです。樹季さんもご存知の通り、尊坊ちゃんは、中等部に入られてから直ぐに旦那様の仕事を手伝われております。それらは全て尊坊ちゃんがご自身で稼いだお金から支払われています。」
「。。。」
樹季は書類に全て目を通し終えて、尊がしようとしている事が分かった。
この3日の間に、彼は既に行動を起こしていた。
尊は、優多を引き留めるだけでなく、優多の全てを引き受ける気なのだ。
俺が連絡を待っている間に、彼は着々とその準備を進めていたのだ。
ともだちにシェアしよう!