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第28話 用意周到。

本気だ。。 アイツは本気で雛多との約束を守るつもりなんだ。。 樹季は神妙な面持ちで瀧に尋ねた。 「瀧さん。。俺は何をすれば良いですか?」 「坊ちゃんお1人では、旦那様を説得する事は難しいかと。。」 「。。ですよね。」 「ですが、幸いにも、壬生家の旦那様は樹季さんの事をとても信頼しておられます。貴方様の力添えが有れば不可能な事では無いかと思われます。」 瀧の言葉を聞き、樹季は大きく深呼吸をし、覚悟を決めた。 「じゃあ、俺も近くに1人暮らしをする所を探さなくちゃな。。」 樹季が独り言の様に呟くと、瀧が鞄から別の書類を出し、樹季に手渡した。 「出過ぎた真似かと思いましたが、尊坊ちゃんが購入された家の近くにある物件を、いくつか調べておきました。不動産業者にも、樹季さんのお名前を告げて頂くだけで、分かるように手配しておりますので、本日、見学に行かれるようでしたら、此方をどうぞ。」 そう言って一枚の紙を差し出して来た。 それには不動産業者の連絡先が書かれていた。 樹季は瀧の一連の言動を見て、大笑いした。 彼には自分達の考えが全てお見通しなのだ。 「瀧さん。貴方が居てくれて良かったです。俺達を支えて下さってありがとうございます。」 樹季は瀧に向かって頭を下げた。 「いえ。当然の事をしたまでです。どうか頭をお上げ下さい。」 樹季が顔を上げると、瀧の少し照れた優しい笑顔が其処に有った。 瀧を玄関まで見送ると、樹季は直ぐ様姉に電話を掛けた。 「もしもし。姉ちゃん? うん。明日家に来るって言ってたよね。ちょっと相談したい事が有るんだけど。。電話じゃ出来ない内容だから、うん。じゃあ、明日。」 姉との通話を終えると、今度は不動産業者に連絡を入れた。 そして彼は身支度を整え、元宮家専属の運転手に声を掛けて、後部座席へと乗り込んだ。 運転手が樹季に尋ねた。 「樹季坊ちゃん。これから何方へ?」 「俺の住まい探し!!」 そう元気良く答えると、運転手に先程の紙を手渡した。 車が走り始めると樹季は窓を少し開け、外の空気を吸い込んだ。 外気は冷たかったが、晴々とした気持ちの良い空模様で、まるで樹季の心の内を表しているようだった。。

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