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第29話 樹季と姉。

樹季は不動業者と物件を見て回り、尊が購入した家から車で10分程行った所に在る家を気に入り、その場で契約を済ませた。 それから一人暮らしをするにあたって、思い付く限りの物を全て買い揃えた。 結局、帰宅したのは深夜近くになってしまった。 翌朝、まだ眠気が覚め止まず、うつ伏せでベッドに微睡んでいた。 不意にドォーンッと背中に衝撃を感じ、痛みと驚きで、目が覚めた。 「樹ちゃん。おはよう!」 「樹季お兄ちゃん。おはよう!」 振り向くと、姉の子供達が樹季の背中に乗っていた。 「お前達か。もう少し優しく起こしてくれよ。」 樹季は、可愛い甥っ子と姪っ子を怒る事は出来ず、笑顔で言った。 「咲(さく)・早苗(さなえ)。おばあちゃんが下で待ってるわよ!」 声がする方に目を向けると、ドアの入り口に姉の梢(こずえ)が立っていた。 「おばあちゃんが動物園連れて行ってくれるんだって!樹ちゃんも一緒に行こうよ!」 咲が嬉しそうに言った。 「今日は、姉ちゃんと大事な話があるから、一緒に出掛けるのは、また今度な。」 『え〜〜〜っ!!』2人が声を揃えて不満げに言った。 「ほらっ。おばあちゃんが行っちゃうわよ」 「ちぇっ。じゃあ、動物園から帰って来たら遊んでよ。それから、今度遊園地連れてってね。約束だよ!」 「樹季お兄ちゃん約束ね!」 「分かった。遊園地な。」 樹季はベッドから起き出し、頷きながら返事をした。 2人が部屋から出ると、姉がソファーに腰を掛けて、樹季に尋ねた。 「で?相談って何?もしかして優多の事?」 姉の梢は、樹季と14も歳が離れていて、彼にとって、姉と言うよりも母親に近い存在だ。 子供達は、兄の咲が12歳・妹の早苗が8歳で 彼らの方が樹季と歳が近い。 全く。。 俺の周りに居る大人達は、どうしてこうも勘が鋭いんだ。。 樹季は苦笑した。 「うん。おじさんが、6日後に出国するんだけど、その時、優多も一緒に連れて行くつもりらしい。」 「当然でしょうね。で?」 「尊が優多と2人で暮らす為に家を買った。俺も其処から近い場所を見つけて昨日契約して来た。」 これには、姉も驚きの表情を浮かべた。

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