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最終話 君の居場所を守る為。

尊は優多にキスをされた瞬間、心臓が激しく揺さ振られ、彼への想いが止めどなく溢れてきた。 「。。優多。。なに?」 優多は無邪気な笑顔を浮かべて言った。 「なにって、おやすみのキスだよ。今朝は尊兄が俺にキスしてくれたろ?そのお返し。」 「ああ。そうだったな。。」 どうしよう。。 言ってしまおうか。 兄の代わりとしてでは無く、お前の傍に居たいと。。 お前が好きだ。。と。 でも。。 もしも、この想いが俺の独り善がりなものだとしたら? 俺達の関係性は音を立てて崩れてしまうだろう。。 尊は自分の想いを伝えるべきか悩んだ。 だが、、優多へ自分の想いを伝える前に、彼の放つ残酷な言葉で、それは杞憂に終わった。 「俺。尊兄と暮らせる様になって嬉しいよ。尊兄と樹季は、俺にとって大切な家族だから。」 「。。家族?」 「うん!本当の兄貴みたいだ!だからず〜っと俺の傍に居てよね!」 「ああ。。そうだな。」 「俺は兄貴としてお前の傍にずっといてやるよ。だから安心して眠れよ。」 「うん。ありがとう。おやすみ。。」 尊の自分を包み込む様な優しさに触れ、優多は瞬く間に深い眠りに落ちていった。 尊は愛しい人の寝顔を見つめながら、自分の想いを抑え、隠し通していく事を決意した。 自分の想いを彼に悟られてはいけない。 彼の笑顔を見続ける為に。 俺が君の居場所を守る為に。。 明日からは、優多の兄貴として彼を支えていく。 だから今だけ。。 この一瞬だけは、優多を愛する1人の男として彼に触れたい。 これが最初で最後だ。 雛多。。 許してくれるよな? 尊は心の中で、雛多に許しを請いながら、優多の柔らかな唇にそっとキスをした。 尊の想いが込められた一粒の涙が、優多の頬に伝い落ちた。 尊は、2年の後に、その固い決意が崩れ去っていくとは露にも思わず、優多を優しく抱きしめ、悲しい眠りについた。。

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