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第51話 自覚し始めた想い。
俺は一体どうしたんだ?
優多の事になると、感情の起伏が激しくなって抑えられない時がある。
この靄がかかっているような感覚はなんなんだろう。。
まさか。。
嫉妬。。?
俺は優多が一度会ったきりの男に対して、嫉妬しているのか?
「。。兄?。尊兄?聞いてる?」
「ん?ああ。」
「俺もう着替えて来て良い?」
「ああ。疲れているのに悪かったな。もう寝よう。」
「大丈夫だよ!じゃあ、着替えて来る。」
「ああ。おやすみ。。」
尊は、優多の後ろ姿をぼんやりと見送っていた。。
尊は自室に入り、ベッドに横たわった。
不意に、あの日樹季が自分に向けて、からかい半分に言った言葉が尊の頭の中をよぎった。
お前は優多を溺愛してる。
尊は頭を激しく横に振り、ぽつりと呟いた。
「そんな。。有り得ない。。」
俺は優多を好きなの。。か?
弟としてでは無く?
「まさかな。。」
尊は、自分の馬鹿げた思い付きを冷笑するかの様に、肩をすくめ口角を上げた。
しかし、その笑顔はぎこちないものにしかならなかった。
優多はまだ12歳の子供だぞ。
しかも男だ。
彼を恋愛対象として好きになったところで、どうにもならない。。
アイツにとって、俺は雛多の代わりでしかないのだから。。
尊は思い付く限りの理由を並べて、自分の優多への想いを必死で否定しようとしていた。
「コンッコンッ」
ドアの向こうからノックする音が聞こえて来た。
尊は反射的に立ち、部屋の入り口へと向かい扉を開けた。
「今日、一緒に寝ても良い?」
枕を握りしめ、自分を見上げている愛しい人の姿が其処に在った。
尊は優多の顔を見た途端に、先程まで必死で誤魔化そうとしていた彼への想いを認めざる終えなかった。
ああ。。
気付いてしまった。
俺は優多を。
今、目の前に居る彼の事を、どうしようもないぐらいに好きなんだ。。
尊は返事をする代わりに頷きながら彼の手を掴み、黙って部屋へと引き入れた。
2人でベッドに入り背後から優多を抱きしめ、いつもの様に彼が寝付くまで頭を優しく撫でていた。
「尊兄。ごめんね。。」
「ん?何が?」
「今日は雨が降っていないのに。。」
「構わないさ。たとえ雨が降っていなくても、お前が1人で寝たくない時は、俺の部屋に来れば良い。お前の居場所は此処なんだから。」
優多は後ろを振り向き、尊の目をじっと見つめると、自ら尊の頬にそっと唇を当てがった。。
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