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 じっくりとベーコンに焼き色を付けていくと途中でにんにくと鷹の爪を投入する。いよいよ本格的にペペロンチーノが出来上がっていくビジョンが見えていく三崎はいよいよお玉を片手に持った。  乳化である。  水と油は本来混ざらない。しかしパスタ湯と割ることによってパスタ湯に含まれる小麦粉と合わさって混ざることができる。これは全てのパスタの基本といっても過言ではない。 中火に熱せられたフライパンにパスタ湯が入る。水分が蒸発して蒸気が溢れる、三崎はフライパンを複数回ゆするとフライパンの中は白く濁った液体で満たされる。  そしていよいよパスタの麺の出番である。 「良い茹で加減じゃあねぇか。そそるねぇ」 「恥ずかしいです……」  パスタの麺を鍋から引き上げて水分を落とす。ある程度落ちたらそのままフライパンに投入する。  そのままソースを絡め、麺を何本か取って味見。 「ちょっと塩味が弱いな」  そう言って塩を一つまみ加えてからまたフライパンを揺すると皿に盛りつけた。 「仕上げはパセリだけで良いか」  乾燥パセリを一つまみ振りかけて、三崎特製のペペロンチーノは完成した。 「義之、まかないできたぞ」  厨房の奥にそう大声で呼ぶと一人の青年が慌てて三崎の元へと駆け寄る。 「流石三崎さん、ほんとうにおいしそうっすね!」 「いいから、黙って食え」  若干釣れない態度でそうあしらうと、三崎はフライパンを洗って片付ける。 「ちぇ、ほんとうにつれないっすね、どうせなら食材じゃなくって僕を調教してくださいよぅ」 「悪いな、俺の愛は食材じゃねぇと意味がなくてな」  そう言いながら、義之のペペロンチーノに温泉卵を乗せる。  これが三崎有吾、サドだがどこか優しい料理人である。

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