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第1話

 視線が、痛い。  好奇、侮蔑、畏怖、怒気……さまざまな感情が交差する。  寄越されるそれぞれの反応を、丹羽(にわ)はうつむき気づかなかったことにして更にフードを深くかぶった。  己の貧相な足元を眺めつつ、時々覗く毛足の長いふさふさ。  丹羽はこの世界の住人ではない。凡庸(ぼんよう)な日常を生気もなくぼんやりと送っていたら、いつの間にか人だけではない世界に迷い込んでいた。否、人間はほとんどいない。犬猫のように尻尾や耳、長い体毛に覆われた直立し闊歩する動物たち。もしかしたら、死後の世界かもしれない。ならば、それでいい。早く彼らに再会できれば。  そんな丹羽の儚い思いは、いくら待っても叶えられず。この世界でも、死なない程度に地味にまるで真綿でジワジワと締め上げられる生殺しのような生活を送っている。 「……?」  喧騒を抜けて静まり返った自宅近くのはずが、耳がナニカを拾う。人の聴力は、こちらの獣人たちほど性能はよくない。目的地へ足を進めるたびに徐々に大きくなる声に、いやな予感は比例していく。  ふにゃぁふにゃぁ。  赤ん坊か、子猫か。  ……どっちもだった。  極力関わりたくない一心で、大回りをして通り過ぎる。  ふにゃぁふにゃぁ。 「……ぁあ、もう!」  小さくなる声に、丹羽は観念して踵を返した。

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