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第2話

「捨て子?」 「ええ。周囲に親らしき方もいなくて。どこかお願いできるところがあれば──」 「ないよ」  独り身で無気力に日常を送る丹羽が育てるのも憚れ、勤め先の上司に相談すれば彼はきっぱりと言い切った。  孤児になった場合はどうするのだろうか。 「君のいた所はどうか知らないが、ここでは子は宝だ。何があっても手放さない。国からの余りある手当てもある」  堕胎や捨て子、ネグレクトが蔓延(はびこ)っていた世界を思い返して、苦いものを覚える。親の望む妊娠でさえ、周囲のたとえば社会環境が受け入れないこともままある。 「でも、病気で親を亡くした子とか、どうしても育てられないとか、施設で……」 「ないよ」  それでもと、言い募る丹羽にフクロウの彼は追い打ちをかけた。 「君たちは何故そのような住みにくい世界で生きているのだ? 生まれたからにはイチ個体として確立しているはずだろう。子は保護する対象であるが、支配する対象ではない。仮に親とやらが手放したとしても、周りの成人が育てればいいだろう」 「それは、」  放り投げだされた異世界で右も左も解らない丹羽に手を差し伸べてくれたのは、この上司だった。彼が『そうだ』と言うなれば、この世界に縁なかった自分には『そう』でしかない。話す言葉も、文字も、生活能力も、目の前の博識な男から学んだ。短く切りそろえていた丹羽の髪が、肩を越すまでの期間であったので相当根気強く教えてくれたのだ。一見冷たそうに見える猛禽類(もうきんるい)であるが、その実あたたかい。恩に着ている。 「じゃあ、この子は……」 「君が育てればいい。見ていれば、あやし方も上手い。赤子を相手するのははじめてではないだろう?」  何でもないことのように、フクロウは丹羽の手の内のぬくもりを示す。 「この子は狼族だ。彼らは愛情深く慈悲深い。いくら目の色がそれぞれ違うとはいえ、それだけでは手放さないだろう。もし気が済まないのならば、国へ届けが出ていないか確認すればいい」  顔を上げた丹羽に、彼はゆっくりとまばたきした。 「だが、その間にこの子は成人しているだろう。狼族の成長は早い」

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