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第6話
それから少しして、隣国に双方の目の色の違う若い王が立ったと風のうわさが舞い込んだ。同時に、丹羽を取り囲んでいたハイエナたちも姿を消した。
「お先に失礼します」
軽く顎を引く上司を認めて、丹羽は岐路につく。さまざまな売屋が連なる商店街を通り抜けつつ、顔見知りになった獣人たちとあいさつを交わし。
コウが広げてくれた視界を、丹羽はできるだけ留めようと努力しているつもりだ。もしあの子が帰ってきたとして、あまりの狭さに驚かないように。
溢れるほどのたくさんの幸いを、分け与えてくれようとした。
自分は続く幸いの向こうの消失を恐れて、結局は手を伸ばせなかった。
受け取れなかった。受け取らなかった。
自分の弱さが招いたことだ。
そして、これからの自分の役目。キラキラを一度に放出できない地味な人生ではあるが、細々とした生涯ゆえに光輝く彼らを見届けるという大切な仕事。
揺れる髪を目の端に捉えて、肩越しに背後を窺う。いい加減に切らなければ。無造作に結んであるだけで、もう以前のように編んでくれる手は望めない。
「長くなったな。鎌でいいか──え、」
換毛期のある獣人たちには髪切り専用のハサミは不要であるため、こちらで出会ったことはない。農具の鎌が最適かと、腰に遊ばせている髪に思案していれば、いつの間にか大きな影が被っていて息をのむ。
またハイエナたちか?
緊張を孕ませながら見上げた先は、きらきら──
「……ぅ、そ……」
頬を撫でる柔らかな毛は、記憶よりだいぶ硬くなって。
細められる双眸に宿るあたたかな眼差し。
「ただいま、タカ」
「……ぇ、ど、……あ、」
今度こそ。
滲む視界で、貴祝はキラキラに手を伸ばした。
「……おかえ、り」
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