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南壱也の失敗③:希望と理想と現実と

「なぁ、ちょっとこれ着てみてよ!」  俺は友人から譲って貰った“ソレ”を秋月に押し付けた。 「うっわ…やっぱお前、超似合うわ」  今目の前に立っているのは、所謂“短ラン”と言われる形に改造された学ランを着た秋月だ。  俺は予々、秋月はブレザーよりも学ランが似合うと思っていた。漸く願いが叶ったと、俺はうっとりしながらほうっと熱い息を吐いた。 「学ラン? え、何で俺に?」 「前からお前に学ラン着せてみたかったんだよ! 絶対似合うと思ってさぁ」  学ランに命をかけている俺のバカな連れは、しょっちゅう作り直しをする。今回もまた同じ様に作り直しをしたとかで、まだまだ真新しい学ランを捨てようとしていたのを譲って貰ったのだ。 「俺、学ランは短ランが好きなんだよな」  連れも背が高いので、この学ランは秋月にもぴったりだ。その上、これ以上無くスタイルの良い男がそれを身に纏っているのだ。短い裾から、秋月の引き締まった腰がシャツ越しだがチラチラと見える。 (堪んねぇ…)  これはアイドルの絶対領域とやらも越せる自信がある。俺が一人身を震わせて感動していると、秋月がコテンと首を傾げた。 「わざわざ買ったの?」 「まさか! 連れが新しく作り変えたとかで、前のを譲ってもらったんだよ」 「……連れ?」  グン、と辺りの空気が温度を下げた。いつもの俺なら、こんな失態犯さなかったに違いない。けど、今の俺は頭の中に花が咲いているのだから空気なんて読めるはずが無かった。 「そ! 昨日の夜貰った時は発狂したね! お前に学ラン着せれるぅ~って! …痛っ!」 「昨日の夜、連れに…ね、」 「あ、」  秋月に押し倒されて気付く。昨日の夜は、秋月のお誘いを断ったんだった…やっべ…。と、頭の中では思うものの、心はもうなんてゆーか、もうっ!! 「や……秋月…」 「南?」  いつものお仕置きを恐れる俺と、何かが違うと気付いたのか、秋月もらしくもなく戸惑っている。 「南、どうし…」 「お願い…そのまま俺ンこと、犯してっ」 「ッ!!」  俺はこの時、欲情していた。普段見る事の出来ない秋月の学ラン姿に、それも、俺の大好きな短ラン姿に、どうしようもなく欲情していた。  煽られた秋月が俺に喰らい付く。 「ああっ! んん、あ…あっ、」  変なスイッチが入った俺は、更に可笑しな事ばかり口にした。 「あっ、秋月! もっと…もっと強く、無理にして! 痛くっ、ンぁあッ! あっ、あぁっ」 「南っ!!」  同じくスイッチの入った秋月に、俺は無茶苦茶貪られる事になった。  ◇  恥ずかしげもなく結果を言えば……良かった。すっげぇ、良かった。じゃあ、何が失敗だったかって言うと…。 「南、これ着て」 「ヤダ!」 「お願い」 「嫌っ! ぜーーーったい嫌だっ!!」  あの日を機に何かに目覚めた秋月が、俺にセーラー服を着せようとして来る事だった…。 「嫌ダァアーーーーッ!!」 END

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